You are here: TOPPAGE 歴史探訪案内 昔ばなし 第18回 金こい銀こい  

昔ばなし

金こい銀こい  掛川市原泉地区

 昔むかし、六部さまが掛川の原泉というところにやってきました。六部さまは今夜の宿をさがしておりましたので、
「もし、ちとお頼みしたいのだが、今宵はこの村に泊めていただきたい。どこぞ夜露をしのげるところはありませぬか。」
と村人にたずねました。村人たちは、
「そうだなあ。この村の中ほどに、昔長者さまが住んどった空き屋敷があるが、あそこはどうじゃろう。」
といい、庄屋さまに相談して六部さまを泊めてあげることにしました。

 六部さまが屋敷へ行ってみると、それは大きな空き屋敷で中は荒れ放題、庭は草ぼうぼうでしたが、夜露をしのげることに感謝しながら静かに床につきました。
  さて、真夜中のこと。夢うつつの中で、なにやら人のがやがやという声に目が覚めました。 「はて、何事であろう。」 暗闇の中でじっとしていると、不思議なことに、数えきれないほどの金の玉、銀の玉が、座敷中をコロコロ、コロコロと転げまわっていました。その金の玉、銀の玉は、お互いに 「金こい、銀こい」「金こい、銀こい」 と呼び合いながら楽しそうにたわむれていました。 六部さまは、あまりの不思議なことにじっとみつめていました。 やがて一番鶏が鳴くと、座敷中を転がっていた玉たちは、大きな玉を先頭にして 「金こい、銀こい」「金こい、銀こい」 と呼び合いながら外へ出ていきます。そして、不思議なことに裏の戸口から数間離れたところまでいくと、ぽかっ、ぽかっとあれほどたくさんあった玉が、みんな消えてしまいました。
  翌朝、なんとも不思議に思った六部さまが、玉の消えたあたりの草むらを調べてみたところ、古井戸をみつけました。「何やらこの井戸の中に訳があるやもしれぬ。」六部さまは、庄屋さまにこの話しをして、もう一晩泊めてもらいました。 真夜中になると、六部さまが思ったとおり金の玉、銀の玉は、昼間みつけたあの古井戸から出てきました。

  三日目の朝になって、六部さまは庄屋さまに昨夜のできごとを話し、村人たちとともに、その古井戸を調べてみることにしました。覗いて見ると、井戸の底になにやら茶色いものが見えます。村人たちが見守る中、六部さまが古井戸の中に降りていきました。 中にあったのは、三つの瓶(かめ)でした。みんなで引き上げて、庄屋さまが恐るおそるふたを取ると、びっくり仰天、中には金貨、銀貨がぎっしりと詰まっていたのです。 庄屋さまは、「この屋敷は代々指折りの長者さまだったから、その当時に蓄えたものがそのまま埋もれていたのだろう。」とおっしゃいました。六部さまが来られたので、主の無念からこの宝が古井戸にあることを伝えたのだと。 庄屋さまはじめ村人たちは、この宝で没落した当家の菩提を弔うことにし、六部さまは小さな庵を建てて菩提を弔いながら村で暮らしたそうです。

※六部:旅の修行僧

参考文献 『ふるさと掛川 第4集』掛川市教育委員会
  『掛川のむかし話』掛川歴史教室

 

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