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シバタ塾 こぼれ話
第1話『いろいろな地方番茶』

原始の製茶法

 お茶の作り方についてお話ししましょう。ずっと昔、日本がまだ文化的な生活をしていない頃は、お茶の葉を天火(お日さま)でムシロの上に干して乾燥させる自然まかせの方法でした。でも、干して放っておくとガリガリになってしまうので、生乾きの状態のときに揉んで、しばらく乾かして…という作業を4回くらいくり返すようになりました。天火でそのまま放っておいたお茶よりも、揉み出したお茶の方が貯蔵性が高いから揉み出す製法が普及したのです。
  そしてもうひとつには、どちらが早いのかわかりませんが、釜炒りの製法。蒸すと茶葉の水分が増えてしまうから、釜で煮てやれば能率がいい。釜で炒って天火で乾かす釜炒り茶という製法は中国で発達しました。でも、中国で釜炒り茶がつくられていたころ、日本では大きな釜を造る技術がなかったために釜炒り茶はあまりつくれなかったのです。今でも嬉野でつくられている釜炒り茶は、唐釜(とうがま)といって中国から買ってきたものを使ったため経済力が必要でした。経済力がないからこそ先人たちが工夫してきて、そのおかげで独特の蒸し製茶が発達したのですね。

花芽がついた秋の番茶

 私が知っているお茶で今でも残るいちばん原始的な方法は、岡山県の山の方にあります。そのお茶のつくり方は、10月ごろ山から枝ごと刈ってきて、その枝を縄で挟んで枝ごと、茎についたまま乾かすというごく簡単な方法。蒸しも何もしません。このお茶は気候が乾燥している秋しかできないそうで、ちょうど干し柿のように吊るされてつくられます。注目すべき点は、秋につくるので、葉の中に花芽がついていること。花が咲く直前のお茶の養分がいちばんたくさんあるときに摘んでつくるのですね。飲むときには乾いた葉をしごいて、火であぶって釜の中に入れ煎じて飲みます。

番茶も出花

 「番茶も出花」といいますが、いくら番茶でもいれたばかりのはウマイよ−と解釈しているでしょう?でも、今お話したように「番茶のおいしいときは花の咲きかけのときだよ」という意味のようです。さらに時代が下ると、番茶の中に玄米をはざしてそれを花に見立てて入れるようになりました。玄米茶というのは番茶の中に花があっておいしいよ−と言うようになってきたのです。
  最近でも関西の秋番茶というのが、コクがあっておいしいということで、東北などでほうじ茶にして飲むのに需要があるそうです。ちょうど秋ですから「出花」の頃ですね。

いろいろな番茶

 山陰山陽含めて関西はほとんど番茶を飲んでいますね。お抹茶を飲む地域ではだいたい番茶を飲みます。片方では地方ごとにいろいろあった番茶の製法が洗練されて煎茶に発展していきました。ところが関西の方では、煎茶が発展することなくお抹茶が発展し、地方番茶とお抹茶の2つが習慣となっていきました。
  番茶は、日向番茶、丹波番茶、出雲、鳥取、四国にもありますね。石川や福井にも。めずらしいものには徳島県に碁石茶という番茶があります。碁石のような格好をしたお茶で、おおぼけこぼけの近く、大豊(おおとよ)町のお茶の博物館でいただいたことがあります。
  奈良の朝粥も、番茶で煮出したものですね。 塩を入れると煎茶は味がわからなくなってしまいますが、番茶なら味が濃いから塩分を含んだ水でいれてもおいしく飲めたのでしょう。東南アジア系の飲み方に近いように思います。バタバタ茶やボテボテ茶という番茶がありますが、あれも米などいろんなもの入れて飲みますね。ボテボテ茶はお茶の葉ではなくてお茶の花を乾燥させたものなのですよ。お茶の花を秋にとってきて、新聞紙に広げて、乾燥している時期ですからだいたい1日で乾きます。それを煮出して御飯を入れて飲む−というか食べるのです。そうすると花に含まれるサポニンという成分が泡立つから、あんな風に泡立てて飲むのでしょうね。

残る文化と変わる習慣

 「茶腹も一時」といって、茶粥や番茶に何か入れたものは、農作業の合間などの小腹がすいたときに食べるものでした。さきほどお話したボテボテ茶も農作業の合間に食べる御飯ですね。お茶の製法というのは、今でもそういう文化が残っています。ですからお茶の製造法というのは、これが煎茶の正しい製造法で、これ以外はお茶じゃない−なんてことは言えないわけね。いろんなお茶があるし、好みや習慣も違う。今から20年前というと、静岡でも急須でお茶を入れるという習慣はなかったんですから。やかんや鉄瓶で煮出して飲んでいました。その前は茶釜がへっついにかかっていて、その茶釜に茶袋(さらしに茶葉を包んだもの)を入れておいて、ひしゃくですくって飲んでいました。急須で飲むというのは昔は贅沢で、ごく最近普及した習慣ですね。

 

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主催:カワサキ機工株式会社