基本編ロゴ[農業経営]7.静岡県茶業試験場の品種アンケートより
現状の品種組み合わせの問題点
静岡県茶業試験場
『生産者に対する品種茶の栽培実態と意向調査』より

◆A014.現状の品種組み合わせの問題点(アンケートより)

右のグラフは、平成11年3月に静岡県茶業試験場が農業経営士、青年農業士、認定農業者216名に対して行ったアンケート調査の結果です(うち回答86件)。

現状の品種組み合わせについては共同の人の100%が「問題あり」と回答しており、自園自製でも86%が問題ありと答えています。問題点としては、自園自製、協同工場ともに「摘採時期の集中化」をあげる人が最も多く、生葉の硬化、規模拡大が困難、品種単独製造ができないなどを問題点としてあげています。

◆A015.既存の品種、系統に対する生産者のコメント(アンケートより)

以下の表は、A014と同じアンケートで発表された生産者からの既存品種に対するコメントをそのまま載せたものです。個人の達観的な評価が含まれていますから、指導機関の発表した品種の特性評価と併せて検討する必要があります。

品種名
長所
短所
Z-1 二番茶は芽があり、芯が生きる。多収。病害虫に強い。 適期を過ぎると硬葉になる
あさつゆ 色沢、水色がよい
味がまろやか

蒸しが強いと粗揉でねやすい
やぶきたと比べて最高値が決まっている
生育が悪い
蒸し度が弱いとクセっぽい香りがある

いなぐち 病気に強い  
おおいわせ 単価が高い
収量が多い
芽数が多い
細よれ
早生種にしては味に問題はない
二番茶も明るい色
八十八夜前に売れる
やぶきたより早いが、色、香りとも新茶らしいすっきりとしたものがなく、単品で販売できない。
収量が少ない
樹体の老化とともに内質が変化する
茎が硬く水色が悪い
樹勢が弱くナガチャコガネに弱い
霜害を受けやすく、回復力が小さい
やぶきたが出てくるとダメ(味)
白茎が目立つ
おくひかり 水色がよい
特有な風味がある
色沢で緑が濃い
仕立てが難しい(直立)
思ったより味や香りがうすい
若摘みしないと特徴が出ない
硬化が早く、被覆をしないと収量があがらない
炭そ病に弱い
摘採適期が短い
適期を逃すと葉が大きく揉めない
硬化しやすい
茎が目立ちやすい
赤焼け病に弱い
蒸しを強くすると破砕しやすい
おくみどり 色沢良
細よれ
遅霜にあたらない
うまみ、こくがある
収量が多い

黒みがある
白茎が目立つ
歩留まりが悪すぎ
茎が白くなりやすい
細よれしない、摘採タイミングが難しい
味が薄い

おくゆたか 水色、滋味がよい
二茶が多い
収量少。摘採時期短い
形状が太い
かなやみどり 早期摘採(適期)での形状、内質は、良いものがある
多収
晩生種。仕立てやすい
硬化が早いので、摘採が遅れがちになる
内質を好む茶商と嫌う茶商に分かれる
ミルク臭等、小葉、硬い
土を選ぶので難しい
香気が嫌われる
くらさわ 摘採時期が早い
多収
蒸しやすい
細よれしやすい
二番茶の品質が悪い
いわゆる品種香がする(これを長所だと評価する人もいる)
渋味あり
くりたわせ   収量が少ない、香気が悪い
さやまかおり 香りがよい
丈夫
収量は多く、樹勢良好
二茶で色を評価される
粉が少ない
早生。葉が立っているので防除しやすく多収。仕立てやすい。みる芽でとると生葉評価が高い
茎が短いため棒が少ない
萎凋すると香りが良くなる
白茎が少ない
形が作りやすい
蒸せば、市場出しでもうかる
摘採直後の製造では赤黒味が出る
甘味が少ない
香気がきつすぎる
蒸しを強くしないと、やぶきたのように蒸せない
まずい
色沢の赤黒み
うま味に欠ける
市場の人気がない
硬葉化が早い
摘採適期が短い
摘採適期がつかみにくい
粗揉以降時間がかかる
細よれしにくい
光沢がない
蒸し度が弱いと白くなる
苦渋味が強く、自販には使えない
さわみずか 強く蒸しても形状ができる 旨味に欠ける
しゅんめい 遅霜にやや強い
山間地向き早生として有望
やぶきたより被覆を長くするとよい
樹勢が強いので霜害後の立ち直りがよい
早生にしては味がよい
施肥に技術が必要、やや難
休眠が遅い
するがわせ 細よれ
やや早い
色沢にさえがない
うま味に欠ける
味が薄い
二茶品質が劣る
蒸し度が強くなってしまう
ふうしゅん 病気に強い 茎が目立つ
まきのはらわせ 甘味が強い
早期摘採可
色がアメ色になりやすい(繊維が硬い)
めいりょく 病気に強い 茎が目立つ
やえほ   蒸しすぎない
やぶきた

品質に優れる(栽培面でも製造面でも)
販売面で有利
品のある味と香り
味が濃く、深蒸に向く
問屋に好まれる
味がよい
細よれしやすい
独特な味
色沢良好
山間地のため、香りがよい
加工が楽
摘採時期が長い
摘みやすい
総合品質に優れている
安定している

病害虫に弱い
病気に弱い、硬葉化が急にくる
栽培に手を抜くと極端に品質が低下する
根張りが悪い
枝が細く、更新効果の期間が短い
香りのうすさ
蒸し度が強いと破砕しやすい
樹勢で他品種に劣る
深刈りするたびに枯れ枝が発生するようになった
節間が短い
秋芽が伸びすぎる
やまかい 細よれ。色沢がよい
形状の良いものを作る
色沢が明るい
水色がよい
病気に強い
やぶきたより2〜3日早い
やや黒みがでる
霜にあうと再生しない
硬化が早い、破砕しやすい
独特のにおいがある
在来種   各工程で、つい取り出しが遅れてしまう(早く乾く?)
静7132 色沢がよい
味も濃く現代向き
やや硬葉化しても、品質の劣化が少ない
収量が少ない
みる芽摘みしてもその割に品質が良くならない
大棟 やぶきたに似ていて3日遅い 少収。やぶきたより病気に弱い
     

 

◆A016.やぶきた以外の品種が普及しない原因について(アンケートより)

やぶきた以外の品種が普及しない原因についての回答では「やぶきた主体の流通構造」がもっとも多い結果が出ています。

やぶきた主体の流通構造は、ブレンドして販売する茶商さんからのやぶきたの信頼の高さと扱いやすさ、消費者に対するブランド力から来るものと思われます。また「単独製造ができない」の回答からは、組織ぐるみでの品種導入の必要性を感じます。単独製造ができない場合は、生葉評価を下げる組織があり、必然的にやぶきた偏重継続につながっていると思います。
経営最適品種として、やぶきた以上に優れた品種がないのも 大きな要因になっています。しかし、品種の特性を十分知り、生育環境や栽 培方法を見直し、特性を生かした生産が行われている事例も少なくないと思います。

調査時の項目名
やぶきた主体の流通構造
やぶきた以外に優れた品種がない
品種の特性が充分把握できていない
品評会などがやぶきた中心
苗木が入手困難
品種に適した栽培製造技術の不足
単独で製造できない

 

※参考資料:静岡県茶業試験場『生産者に対する品種茶の栽培実態と意向調査』

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