基本編ロゴ[生理生態]15.裾刈りと収量


◆C031.裾刈りが収量に及ぼす影響を実験

処理方法
無処理
10%(両側各10cm)
15%カット(〃15cm)
20%カット(〃20cm)
25%カット(〃25cm)
%=摘採面幅200cmに対して
裾部カットの実験図

※両裾部を2等分した位置で先端部から45°の角度でカット。
※開張性品種「からべに」で調査

裾部をカットすると、摘採面幅が減少しますが、単純に「摘採面が減るから収量が減る」 わけではなく、茶樹の生育や収量に影響します。

裾刈りをどの程度まで行うのが良いのか知るために、右のような処理をして翌年一番茶収穫への影響について実験を行いました。

●実験結果

処理方法
出開度
%
枠摘収量
%
芽数
100芽重
g
帯枠収量
g
1区収量
kg
無処理
76
28.3
71
39.9
213
7.27
10%
67
25.1
65
38.9
192
7.72
15%
70
27.1
69
39.3
215
7.40
20%
69
29.0
67
43.5
225
8.20
25%
69
31.3
66
47.1
223
7.12
※一番茶収量(5月15日)調査

10〜25%の裾刈りをした茶園では、無処理の茶園と比べて帯枠摘み収量が増加しました。総収量では、25%カットは摘採面が減少し有効な部分までカットされたため減収しましたが、20%以下では平均7%程度増収の結果が得られました。

●実験から見てとれること

摘採面積率が100%以上あっても、畦方向や畦間の幅によっては日照時間が短縮され、垂れた枝部分への養分の転流が少なく収量につながりません。裾部の枝を無駄枝として刈り落とすことで、養水分が他の有効な枝に利用されて生産に好影響を与えたものと考えられます。
しかし、これは品種特性や茶園の樹勢、樹量などによって違いがあるものと考えられますから、一概に裾部を刈り落とせば増収するとは言えませんし、25%が裾刈りの限界とも断定できません。

●なぜ裾部刈り落としをするか

裾部の無駄な枝を刈り落とすことで、養水分を有効に利用させるのが裾部刈り落としの主な目的です。また、裾部の枝は、施肥の際に株元に行き渡らない、畦間を歩きにくいなど管理作業上邪魔になります。これは、作業の能率が悪くなり精度を低下させる原因となっています。これらを解消する目的だけでも、裾部刈り落としは有効と考えられます。

樹形の改善●裾部カットの方法

長年裾部を刈り落としていない食パン型の樹形の茶園では、樹量が大きく裾部を刈り落とすのはたいへんな作業で、現在の剪枝機や裾刈り機では対応できないこともあります。今後、裾刈り機の改善や新規開発が期待されます。
現状では、中刈り更新の際にあらかじめ両側を20〜30cm刈り込んでから行います。刈り落としの時期はとくに設定しませんが、更新や整枝の際や農閑期に行うのがよいでしょう。ただし、北部山間地で冬期寒風が強くあたる茶園では、畦間に寒風が入って落葉するのを防ぐため、一部の刈り落としを止めて防風に使います。

本来は、幼木園の仕立て段階から裾部の処理を行っておけば、成木園になってから刈り落とす必要が無くなり管理作業が軽減されます。これについては「幼木の仕立て方」のページ(2001年3月予定)で詳しくご説明しましょう。


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