第2回 『茶温としとり−製茶の哲学』 |
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2-2.茶温は人肌(34〜35℃)を保つ
第1回でちょっとやったけど、茶温についておしえてください。
お茶の品質の優劣は、その多くが仕上がりの色できまります。製茶のときに生葉の色を落とさないように仕上げて、復元性の高いお茶をつくりたい。それには茶温を人肌に保って乾燥させていくことがとても重要なことです。茶温は一度あがってしまうともとにもどらず、きれいな緑色で風味のあるお茶はできません。茶温を保つためには、熱風温度の調整を的確に行うことです。「熱風温度を的確に」とひとことで言っても簡単ではなくて、熱風温度はお天気によっても調整しなきゃいけないんですよ。
お天気?
ほら、夏にビールを出すと瓶に水滴がつくでしょ。あれは夏は湿度が高いからですね。湿球温度の測り方を前回やりましたが、湿球温度は空気中の湿度によって変わります。だから工程設定には製茶工場内の湿度を考慮しなければいけないんです。
それから、熱風があたるとお茶がどうなるのかを知らなくてはいけませんね。たとえば、絶対湿度が0.012(kg/kg)のときに100度の風をあてると湿球温度は35.5℃になります。茶葉は濡れているから、熱風があたっても水を蒸発するときに熱風温度が下がるからです。※絶対湿度0.012とは、1kgの空気中に12gの水分がある状態のこと。
茶温が低かったり高かったりするとどうなるの?
茶温が33℃以下では、粗揉工程で茶葉が主軸や揉み手にくっついてむら乾きして浅緑色になり、作業効率が低下します。38℃以上だと赤味を帯びたお茶に、40℃以上だと赤黒くなり、45℃以上だと褐色になってお茶の風味は損なわれてしまいます。
茶温による茶葉色の変化 適温の場合 茶温40℃以上の場合 茶温45℃以上の場合
こんなに色が変わってしまうんだね。茶温を保つことは大切なことなんだ。
そう。天気だけではなくいろんな製茶条件からどのように乾燥するかを割り出してから、理想的な乾燥条件、つまり茶温としとりを保ちながら乾燥させる工程を組みます。工程中では最初のうちは水分量の多い茶葉ですから、熱風をあててもあまり茶温はあがりませんが、しだいに乾燥してくると茶葉が上乾きしないように熱風を弱くしたり、茶葉の中の水分を揉み出すことをして茶温をあげないようにします。これが「しとり」。葉打ちと揉み込みのバランスがよく適度に水分が揉み出されていれば、茶温が適温に保たれます。
しとり−芯水の揉み出しと乾燥の速度を同じに
では、しとりのことをもう少し詳しくおしえて。
しとりとは、好適乾燥状態のことです。製茶のはじめには茶葉の含水率が高いから、そんなに揉み出さなくてもいい。しかし、だんだん乾燥してくるにつれて、茶葉中の水分を外に揉み出さなくては上乾きしてしまうようになります。茶葉の方面がほどよく湿っていて、熱風の熱量がその水分を蒸発されることに100%使われていること。これを恒率乾燥期間といいます。茶葉の水分が減少してくると、茶温が上昇して乾燥の速度が落ちてきます。これを減率乾燥速度期間と言って、一般的に上乾きという状態。茶葉を乾燥させていく工程で、最適な含水状態をしとりといいます。機械製茶では、この状態になるように操作条件、つまり回転数、揉み手のバネ圧、熱風量を設定することが重要です。
じゃあ、茶葉が乾燥していくにつれて、操作条件を変えるってこと?
もちろんそうだよ。蒸しあがったばかりの茶葉は水分が多いから、揉み出さないで熱風をあてることで表面の水分をとっていく。そのときは、処理する茶葉全体にムラなく熱風があたるように回転させるんだ。そして水分量が減少していくに従って熱風、揉み手、回転数を調整していきます。いつまでも同じ作業をしていると上乾きがおこり、中に水分があるのに表面だけ乾燥してしまいますから、カサカサのお茶になってしまいます。つまり、ちょうどいい具合にお茶を揉んでいくことをしとりを保つというんだよ。
そのタイミングがたいせつなんだね。
そういうこと。このタイミングについては、粗揉工程を勉強するときに詳しくお話しましょうね。
次は『緑のお茶をつくろう!』葉緑素のお話です。
※熱風温度の調整は粗揉工程の回で詳しくおしえていただきます。
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