第3回 『緑のお茶をつくろう』 |
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3-1.お茶の色素
ひとことで「いいお茶をつくりましょう」と言っても、ではどんなお茶がいいのかというと百人百様ですね。でも「緑のきれいなお茶」というのは、市場での評価において欠かせない要素なのです。今回は緑のお茶づくりに必要な知識、クロロフィルについてをお勉強しましょう。
葉緑体(ツバキ科)
クロロフィルって葉緑素のことですね。
そう。お茶の葉には、クロロフィルaとクロロフィルbという2種類の葉緑素が含まれています。生葉が含む葉緑素の量は、その生育状態や産地によっても異なり、山間地など日照時間の少ない産地のお茶に多く含まれます。
葉緑素って、お日様に当たった方がいいんじゃないの?お茶が日陰で育つとクロロフィルが増えるのは、少ない光で炭酸同化作用をしようとするからです。玉露や抹茶などで行われている被覆栽培という栽培法は、日陰をつくって暗くすることによって葉緑素が爆発的に増えるから人為的に日陰をつくっているのです。それをお茶にすると緑のきれいなお茶ができる。ところが陽に当たると、この葉緑素が紫外線で分解して無くなってしまうんです。
[植物色素の種類とはたらき]
[キーワード]日陰でクロロフィルaが増える
植物は、光合成というはたらきをするために、日照や環境によって葉緑体の配列や量を変化させる。お茶は半陰葉植物で光飽和点が低く、少ない光でも光合成をしようとする。日陰で育成すると良い色(青緑)のお茶ができるのは、青緑の色素であるクロロフィルaが、光の少ない環境の中で光合成をしようと、爆発的に量をふやすからである。
お茶の木が日に当たることを嫌うの?
もともと茶の木というのは半陰樹といって、直射日光を嫌います。大きな木の下に生える潅木で、大きな木の枝からもれる薄日で生育する木なんです。でも、生育には日光が当たった方がいいんです。 昔「本茶」とよばれたお茶の産地である栂尾の高山寺は、一年中日の当たらないところです。そこでつくったお茶がいちばんおいしいお茶とされていたわけです。そして京都の場合には醍醐、朝日…そういう山でとったお茶が珍重されましたが、すべて日照時間が少ない土地です。室町〜足利時代に全国の茶産地として5つの土地があげられていて、奈良県大和の室生寺、伊勢の河居、伊賀の服部、駿河の清見、武蔵の川越。これらも朝から晩まで日が当たらないところです。
こも掛けした茶園(昭和44年静岡県岡部町)
今のお茶畑の様子とぜんちがうね。
そうですね。なぜかというと、当時はほとんど自然にまかせてお茶を栽培していたから。その後、秀吉の時代に、茶の木を平地で日に当ててよく生育させて、茶摘みの新芽が出る頃に日陰をつくってお茶の葉緑素を多くするという技術革新が起こったんですよ。その革新によって、生産量は爆発的に増大します。
山の日陰じゃなくて、広い茶園でお茶がつくれるようになったんだね。
そう。その頃の被覆は、丸太と竹竿で囲いをしてその上によしずを張って、1反稲(ワラ)をふりかける。「すの下十日、ワラ下十日」と言って、よしずの簾(す)の下に10日、田んぼのワラをかけて真っ暗にして10日、そして摘むわけです。だからだいたい20日くらいの日陰で茶の芽を出す。はじめ薄くして、だんだん暗くしていく。そうすると真っ青なやわらかいお茶の葉ができます。ふだんは陽当たりがいいから茶園の生育もとてもよくて、しかもおいしいお茶ができる。
では、クロロフィルを多く含むお茶は、どうやってつくるの?
カンレンシャ被覆(静岡県岡部町) |
まず栽培環境では、雨が多くて、温暖で、水はけが良くて、川霧がかかるところや日陰で育ったお茶です。
最近、鹿児島がいい二番茶をつくろうということで、茶畑にカンレンシャ被覆といって真っ黒いカンレンシャをかけます。一番茶はもちろん二番茶にも黒い網をかけるんです。そうすると色がよくなる、というか、もとに戻るわけ。もともとお茶というのは日陰に育つものを陽当たりのいい畑に植えたから、青い色のいいお茶ができないのです。
もとの環境においてあげるということですか?
茶の木にとっては光があった方がいいので、生育のために太陽光線が多いところに植えますからね。摘むときだけ、摘採真際1週間くらい暗くしてあげれば、色が青いいいお茶ができますよ。
写真提供:小笠郡菊川町三ツ井稔様
次は製茶工程でクロロフィルを壊さない!だよ。
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