You are here: TOPPAGE 歴史探訪案内 昔ばなし 第24回椿の淵のうなぎ [解説-1]鰻の意味すること  

[解説-1]   
鰻の意味すること

 この昔話「椿の淵のうなぎ」の興味深いところは、話を構成している要素「椿」「淵」「鰻、蛇」が、それぞれが各地の伝承や宗教的な教えで、霊的、神的なものとされていることです。淵は雨乞いを行う、水神が棲むなどと伝えられ、その水神の多くは竜、蛇、鰻、山女などです。そして椿は、若狭の八百比丘尼が手に持って巡礼した東北地方に移植されたという柳田國男の説が知られ、神意の示される聖なる木と考えられています。また、松、榎、杉などとともに木の下に黄金が埋まっているという言い伝えや、椿の小槌が化けるなどといって嫌う伝承もあります。話の舞台である椿の淵が、農耕を目的に椿を伐ってできた淵であることからこのような伝説が伝えられたのかもしれません。

『水族四帖』鰻

鰻の意味

 今でも「土用の丑の日に鰻を食べれば夏バテしない」と言います。鰻は『万葉集』巻16に「石麿呂に吾物申す夏痩せに良といふ物ぞ鰻漁り食せ」という歌が初見。これは大伴家持が痩身の石麿呂を笑って詠んだ歌で、当時すでに夏場のスタミナ食として知られていたことがわかります。現代のように商業的に広まったのは、平賀源内が鰻屋にたのまれて「今日は丑」と看板を書いて大評判になったのが始めだともいいます。鰻を食する民間療法も各地に伝えられていて、肝や油、生血などで結核、眼病、中風などが治るというものでした。 反面、椿の淵の伝説と同様に、鰻を禁食とする例も各地に見られ、その理由はウナギを神の使い、水神だからという例がほとんどです。

 

ウナギを食べない理由

  • 食べると三つ口の子ができる、目がはれる、盲目になる(栃木県上郡賀郡)
  • 娘がウナギを食べるとウナギを産む(宮城県黒川郡粕川石原地区)
  • ウナギは神の使いだから氏子は禁食(京都市三島神社)
  • ウナギは秋葉様の惜しみの魚で食べてはならぬ(神奈川)
  • ウナギを食べると虚空様の罰があたる(栃木)
  • 祈願の時ウナギの絵馬を奉納(京都市三島神社)
  • ウナギを放生して子どもの健康を祈る(長野県諏訪郡の御射山祭)
  • 深淵に棲む巨大ウナギは神の使いである(静岡県賀茂郡河津町佐野川)

 

 

参考文献 『日本伝説大系』別巻1みずうみ書房
 
『現代民話考9木霊・蛇』松谷みよ子著

 

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