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昔ばなし
蛇身鳥物語
遠州菊川の里に、愛宕(あたご)の庄司 平内という狩の好きな男がいました。 平内は、美しい妻と、娘の月小夜と、息子の八太郎と四人で平穏な暮らしをしていました。 しかし、息子と娘は、平内が鳥や獣を捕ってくるたびに、心をいためていました。 「おとうさん、どうか、もう鳥や動物たちを殺すのはやめてください」 八太郎は、何度も平内に頼みましたが、 平内はいっこうにやめようとはしませんでした。 |
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ある日、平内はいつものように山へと入っていきました。 前の日に降った大雪で、あたり一面真っ白でした。 歩いて行くと、行く手にがさがさと黒い影が動きました。 「しめた、大きな熊だ!」 平内が矢を放つと、びゅーんと音をたて、その先でどさりと倒れる音がしました。 白い雪の上には真っ赤な血が飛び散っています。 平内が獲物に顔を寄せたときです。 「おとうさん…」 今にも消えいりそうな声がするではありませんか。 息子の八太郎が平内の狩りをやめさせようと、熊の皮をかぶっていたのです。 平内は涙を流し、わが子を抱きかかえました。
平内が亡骸を抱いて里に帰ると、
妻は変わり果てたわが子八太郎の姿を見て、狂ったように泣き叫び、
そのまま家を飛び出し、菊川の淵に身を沈めてしまいました。 |
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