特集4.枠摘み調査
3:結果を分析しよう
※達成可能な目標値を設定しましょう。
■3-1.自分の目標値と調査結果を比較する

枠摘みの結果をどう見るかは、管理者の目指す茶園像によって異なります。理想とする生育状態や生育バランスなどの基準を設けて、それに対する+−で結果を評価します。

 

芽の伸び方 データから芽数の多少、芽重、芽長を見ます。地域の気象や生産体系によって異なりますが、平均的な数値として芽数=60〜70、芽重=0.5g程度と考えてください。
枠収量 「この茶園からどれだけの収穫を得たい」という目標があるでしょう。その場合の枠収量の目標値(××g〜○○g)を立てておけば、得られたデータからおよその実績収量を予測できます。
出開き率 摘採日に調査した場合は、出開き率が摘採時の品質評価のひとつとなります。実際の収穫量や単価と照合すれば、「どれくらいの熟度でどの位置で摘採していくらで売れたか」を記録して長期的な経営計画に役立てることができます。
開葉数 開葉数は茶樹の栄養状態や芽数の多少によって変わります。一番茶の場合だいたい5枚で出開き、栄養状態が良いと6枚開葉しますから、開葉数を観察することによって芽の良否や茶樹の栄養状態を見てとれます。
また、摘採適期を開葉数によって見極めることができます。

M茶園 F茶園
小型芽で芽数が多い 大型芽で芽数が少ない

■3-2.芽の生育傾向を視覚的に見る

今年(2001年)の摘採期にある所で行った枠摘みの結果を比較してみましょう。芽長別に並べてみるとM茶園が小型芽の芽数型であることが一目瞭然です。F茶園は芽重型ですが、芽数が少なくおそらく更新後間もない茶園だと思われます。

また、右写真のような1本づつの芽を見ると芽の均一性がわかります。M茶園は小型芽で芽数型ですが芽の均一性がとれていて、F茶園は大型ですが生育のムラが見られます。このように元データとなる芽の状態やバラつきにも着目してください。

基本編ロゴ 木村先生の枠摘み評価例


B茶園/2001.05.01
枠No.
摘採芽数
無効芽数
全芽数
摘採芽数率
い園
53.4本
31.4本
84.8本
62.9%
ろ園
46.8本
41.6本
88.4本
52.9%
A茶園/2001.05.07
枠No.
摘採芽数
無効芽数
全芽数
摘採芽数率
い園
38
21
59
64.4%
ろ園
30
21
51
58.8%
は園
38
23
61
62.3%
■3-3.無効芽を調べる

下表はA茶園とB茶園の全芽数に対する有効芽数を調べたものです。有効芽数率が高ければ、それだけ茶樹の生産能力が摘採に有効に使われていることになります。私としては有効芽数率70%以上を目標にしてほしいと思います。ここでカウントされた無効芽は開葉した芽のみで、対象にしなかった未開葉芽や未萠芽を含めると摘採面上に伸び切らない芽が多くなります。おそらく摘芽率は50%程度と考えられます。

無効芽数が多い原因は枝の構成にあると考えて、B茶園の枝の太さを調査しました。その結果、芽が付いている枝は平均1.56mmφで、うち60%が1.5mm以下の細い枝でした。この場合の対策は更新して枝の太さを1.8mmφ以上にすることです。

基本編ロゴ 枝が細いってどれくらい?


芽数と芽重のバランスが悪い(芽重が足りない)
期待した通りの芽伸びではなかった。

  1. 適期の熟度で摘採したかチェックする。
  2. 枝の構成を改善する必要がある(更新)。
  3. 病害虫防除を徹底する。

収量があがらない
芽数・芽重ともに目標値に達しない場合。

  1. 摘採回数を見直して樹勢回復に努める。
  2. 秋整枝の深さと時期を見直す。
  3. 施肥効率をアップするための土壌改善を行う。

芽の均一性が悪い

  1. 枝の構成を見直す。
  2. 摘採、整枝後の遅れ芽の処置を適期に行う。
  3. 秋整枝、春ならしを丁寧に行う。
■3-4.改善策を立てる

上記のように調査結果を分析したら、今後の改善策を立てます。目標とする茶園の姿や生産体系によってその後の茶園管理の方針が決まってきます。茶園が現在の状態になった原因や個々の方針によってさまざまですが、考えられる対策の例を右にあげます。

※これらは一部のヒントであり、長期的な改善や対策は管理項目を複合的に考える必要があります。

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特集4もくじ 4-1:管理の原点4-2:枠摘み調査の実践4-3:結果を分析

 

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