特集4.茶園の実態を調査しよう
1:枠摘み調査は茶園管理の原点
枠摘み調査する木村先生

 

■1-1.枠摘み調査で栽培感覚を養う

「今年は芽伸びが良かった」「芽数が多かった」など、茶期が終わると摘採の反省が聞こえてきます。しかし、成果を見てその原因を追求するときには感覚的なデータだけでは一概に言えません。生産者のみなさんには、芽の実態を確認したいという情報欲をもち、摘採時期の判断力を養ってほしいと思います。
枠摘み調査は、収量を予測したり茶樹の生育状態を判断する目的で、芽の大きさや芽数の客観的な調査を行い、その結果を数値化します。摘採面を一見しただけでは読み取れない情報が、枠摘み調査の結果にはたくさん詰まっているのです。


■1-2.枠摘み調査でわかること

収量構成(芽数と芽重、芽長)

芽数と芽重・芽長は収量の構成要素で、逆の相関関係にあります。
芽数と芽重・芽長の相関カーブがどういう状態にあるのか把握することが、自分の求めるもっとも適した位置に近づける手段を決定する基礎データとなります。

収穫の適期(芽の熟度)

調査結果から芽の熟度を判断できます。ひとつには、サンプルのうち出開いている芽の割合を「出開き度」といい、調査時点の出開き度のデータから摘採適期を判断するのに利用します。出開きは地域や気象条件によって異なりますが、開葉速度を5日として1日あたり8%程度(一番茶初期は5%程度)進みます。たとえば調査日に30%の出開き度で、希望する摘採開始が60%だったら「3〜4日待ちましょう」と判断できます。 また、開葉数によって芽の熟度を判断することもできます。

人が目で見た場合、どうしてもよく伸びた芽だけを見てしまいう傾向があります。小さな芽ほど早く出開きますから、感覚的に「出開き50%位かな」と思って調査すると70%だったりすることがあります。感覚的に判断したことを実際に確認するのは大切なことです。

ロゴ [4-1-3]茶園を観察しよう(芽のサイズ)
基本編ロゴ 出開き度とは
摘採位置と収量と全窒素量の関係


■1-3.調査データ活用のメリット

組織で数値化されたデータを使うこと

枠摘み調査の利点は「データを数値化すること」にあります。数値化されたデータは記録して継続的な判断材料とすることができます。また、組織で計画を立てる際に誰もが納得できる客観的なデータとして使えることも利点です。
また、栽培管理や経営判断の感覚にすぐれた人は、茶園の観察力が高いのです。自分で数値化して記録することは、経営感覚を養うことにもつながります。

摘採計画を立てる

たとえば流通から考えて「今年は○○kgで始めて××kgで終わろう」という摘採計画を生産組織で立てる場合、その計画を立てるためには、摘採の数日前に枠摘み調査から出開き度を調べて摘採適期を予測し、同時に坪刈りをやって予測収量を計算します。気象庁の発表する気温や霜の予測に注意しながら芽の進み具合を予測すれば、品質重視の摘採計画を立てることができます。

茶園管理の基礎データとして

摘採時の状態を数値化しておけば、そのデータを秋整枝や更新判断に利用できます。注意深く観察してより正確なデータをもとに栽培管理を行うことが、適確な判断を導きます。
また、収量の構成要素から茶樹の樹勢がわかります。結果が良かったら何が良かったのか、 悪かったら原因はどこにあるのか、気象や土壌状態などの環境的要素と照らし合わせた客観的な判断から摘採後の茶園管理を計画を立てれば、目標達成への近道となるはずです。

ロゴ [4-2]摘採計画
基本編ロゴ 枠摘み収量
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特集4もくじ 4-1:管理の原点4-2:枠摘み調査の実践4-3:結果を分析

 

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