ロゴ 第6回粗揉-1
『粗揉工程での乾燥と実践』
お茶街道


6-1.乾燥の目的と理想のお茶

6-1-1.なぜお茶を揉んで乾燥させるか

shiba

先生、いよいよ蒸しが終って、乾燥工程に入ります。最初に、なぜお茶を乾燥させるのかおしえてください。


お茶はその昔山茶といって、畑や林の端に植えたお茶の葉を摘み、組織を壊すために少し揉んですぐに煮出して飲んだものです。そのうち流通させる目的で貯蔵性を高めることが求められるようになり、乾燥させることで貯蔵性をもたせるようになります。さらに、製茶によって生葉に含まれる青臭味、エグミ(苦渋味)やアクを取り除くことができ、現在のような煎茶が確立されました。
[Point1]お茶をなぜ揉むのか  

1.せんをきかせる

煎茶をいれたときに、よく出る(または何度も出る)ようにする。
2.葉と茎を同時に乾燥させる 葉の芯に水分が残らないように、構造の違う部位を効率よく同時に乾燥させる。
3.アク抜きをする 揉むことによって茎に含まれるうまみ成分が抽出されて渋み等の成分比率が下がるため、うまみを感じるようになる。

6-1-2.お茶の復元性 [生きたお茶をつくる]

shiba『茶温としとり』で揉み出すバランスが大切って教えていただきましたが、今回は理想的なお茶について教えていただけますか?

 


一言で言えば、「復元性の高いお茶」、生きたお茶をつくることです。完成した煎茶を急須でいれてお湯を含んだときに、蒸しあがった茶葉のように広がり、いきいきした美しい緑色をしている−そんなお茶が理想ですね。

 

shibaすごいな。そういうお茶をつくるには、広い意味でいうとどう製茶していったらいいのでしょうか。

茶の葉

お茶の葉をよく見てください。(写真)茎のところは円柱型で、葉は薄く平たいでしょう。1枚の茶の葉でも、場所によって水分の多い少ないがあります。この水分を均等に揉み出すことが重要なことです。製茶において、フリーズドライのように簡単に乾燥させる方法をとらないで、茶温としとりを守りながら、各工程で段階を踏んで乾燥させていくのは、この「復元性の高いお茶」を求めるからなのです。

shiba1枚の葉のことを考えて、何十キロもの茶葉をつくる製茶工程を組んでいくのですね。


そう。さらに製品の完成度の高さとは、形や色つやなどの外観だけではなく、みずみずしい香りを残し、いれたときの水色も美しいことが求められます。第3回で理想のお茶の水色は白水という話をしました。お茶の品評会では、これを「力のある白水」と呼びます。
復元性の高いお茶をつくるためには、よい色に仕上げるにはクロロフィルを壊さないよう茶温の上昇を防ぎます。そして形を保つために、つまり形を復元させるために、しとりがあるように揉むことが必要になります。

shiba
茶温としとりは、生きたお茶をつくるために大切なことなんですね。

 


そうだよ。この復元性の元となる考えは、日本人が食品に求める「鮮度」。新鮮さを求めるのは日本の食文化の基本とも言えます。素材そのものを生かした食を尊ぶ精神がありますから、煎茶製造においても、貯蔵性をもたせるために乾燥しながらも、鮮度が求められるのです。しかも、鮮度を求めながらも青臭みを嫌うから、悪臭やアクを取り除くように加工するのです。

 

 

みなさんも「復元性の高いお茶」を目指してがんばりましょう!
次は
粗揉工程の流れです。

 

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