特集5.液肥試験視察
1:情報を判断する視点
農業新聞
2001/5/15日本農業新聞

 

■1-1.点滴液肥試験結果に関心

今年5月。一番茶の結果について意見が出てきた頃に、1本の新聞記事が目にとまりました。そこには液肥試験を行っている豊橋農業技術センターで、慣行区と比較して茶樹の生育に大きな差が見られたとの状況が報告されていました。折しもこの春先は東海地方で雨量が少ない年だったこと、減肥対策による肥料の吸収率アップが課題となっていましたから、この記事は多くの生産者、指導者のみなさんの関心を集めたことと思われます。

早速、二番茶が終わった頃を見計らって豊橋を訪問し、研究者の方とお話ししてきました。


■1-2.情報に対して冷静な判断を

さて、今回主に点滴液肥をとりあげますが、これは必ずしもすべての茶生産者に有益な情報としてお話しするものではありません。
みなさんも他所の茶園の実態や研究機関を視察に行かれる機会が多いと思います。その際、茶園はその立地条件や栽培管理方法、経営方針等いろいろなことが絡み合って結果が成り立っていることを忘れないでください。物事をより正確に読み取るためには、結果として出された数値だけをそのまま受け止めずに、試験が行われた条件や管理体制、目標とする生産構成等において、自分の茶園との違いを見定めながら評価する、あるいは情報として頭に入れておくことが大切です。


■1-3.やっぱり肥料を吸収する「根の活力」が基本

現在は環境問題への対策として、多くの茶産地では施肥量の基準値を定められています。そのため、私は吸収力のアップを図るべきとお話ししてきました。その有効な対策としては根の分布を広げること、根量を増やすことが大切であり、深耕や有機物投入による土づくりが基本となります。そして根に活力をもたせ活発な白い細根を繁茂させるためには、夏の生育量最多の時期に成熟した活力ある葉を十分につけて秋を迎えることが最も有効だと考えています。そうした面では、芽出し肥と呼ばれる春肥はもちろん、夏肥は茶樹にとって重要な養分となります。
次に、肥料を与えるタイミングです。茶の利用時期を考えて、適した時期に分施すること。 これからの茶園管理では、茶樹に有効に利用される施肥体系を考えていかなければなりません。そして、限られた労働力と資本投下で茶園管理を行っていくには、自分たちの茶園に適した施肥とはどんなものかを真剣に考える必要があるのです。

ロゴ ●[2-1]環境保全と施肥
基本編ロゴ 各県の施肥基準


樹冠下のチューブ

■1-4.点滴液肥は有効か?

液肥の試験は各地の試験場で研究テーマに掲げられてきました。配管したチューブから少量づつ点滴する施肥方法は、濃度障害を避ける面でも、吸収率を高める面でも有効な手段と想像されたからです。
しかし、肥料がどのように茶樹に利用されるか、土壌や気象との関係、この施肥方法によって根の分布にどう影響を与えるかなど、明らかにされていない事柄が多くあります。今回の豊橋を含めた様々な試験研究によって、新しい施肥方法や施肥体系が明らかにされるには未だ年月を必要とすると思われます。現状では、経営方針や組織、生産する茶の品質、気象や土壌などの条件に合えば有効なシステムと言えそうです。

 
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