2月号 1.環境保全と施肥
-新しい時代の茶園は土づくりから-


2-1-1.肥料神話と環境問題

硝酸態窒素による水質汚染が社会問題となり、各茶産地では施肥基準を設けて施肥削減に取り組んでいます。
品質向上を目的に100kg/10a以上の施肥を行ってきた過去の経緯から、土壌内の窒素濃度が非常に高く、施肥効果が下がる、微生物の減少、根の吸収力が低下する濃度障害など、環境問題だけでなく、茶樹の生育にも悪影響を及ぼしています。肥料を与えるほど茶葉の品質が向上するという考えは、改めなければなりません。では、どうしたらいいのか。茶樹にとって適切な施肥について学んでいきましょう。

基本編ロゴ 施肥基準
分解図-a 分解図-b


2-1-2.茶樹の窒素吸収のしくみ

肥料の主成分である窒素は、生葉のアミノ酸生成に影響する成分として多量が投下されてきました。 投入した肥料は分解してアンモニア態窒素になり、さらに数週間経過すると硝酸菌によって硝酸態窒素に変化します。茶樹は、アンモニア態窒素の状態でよく吸収し、 硝酸態窒素では吸収率が低い。そのため、適量の施肥で効果を出すためには、アンモニア態窒素でいる時間を長く保つこと、茶樹の吸収率を高めること、施肥効果のあがる土壌状態であることが必要です。

 

 
施肥量実験

2-1-3.肥料減量は好影響?

では、茶樹はどの程度与えた肥料を吸収するのか。
右図のように、施肥を54kg(施肥窒素量)施した場合と108kg施した場合とで比較した実験で、茶樹に吸収された窒素量は20kg:24kgと大差がありません。108kg与えた方は土壌中の残留量が多くなり、かえって濃度障害による根の傷みが起こって茶樹に悪影響を及ぼします。

まだはっきりしたことは言えませんが、施肥量を減量した茶園を観察してきて、私が見たところでは、減収、品質低下などのマイナス影響はないようです。かえって濃度障害が解消されて根の分布が良好となり、適切に管理していけば茶樹の状態は良くなっていくと考えています。結論には数年の経過を要しますが、今後各機関から肥料減量による茶園への影響に関する調査結果が発表されていくと思います。

基本編ロゴ 濃度障害とは?

土壌の改善2-1-4.茶農家がやるべきことは土づくり

肥料減量によって茶園に投下する資金は減少します。その替わりに、茶園管理のうえで労力投下が求められてきます。 土づくりなどの管理作業を行うか否かは、茶樹の生育とともに窒素吸収率に大きく影響し、これからのお茶づくりにおいて重要なポイントとなってくるでしょう。

茶樹の窒素吸収率は、最高でも50%程度。この吸収率を高めるためには、酸度の矯正(PH4〜5)、土壌の化学性の改善、物理性の改善を行います。 化学性の改善とは、土壌に不足しがちな石灰や苦土などの微量要素を補充すること。これにより茶樹の健康を維持します。
物理性の改善とは、土を柔らかく保ち、孔隙量を多くして酸素を十分に含み、透水性のよい土壌をつくること(三相分布)です。お茶は酸素要求量の多い作物ですから、酸素の量は、成長、呼吸機能、根の再生機能に大きく影響し、また、微生物の生息条件としても必要条件となります。養分を吸収する根が、広く深く分布して活力があり、加えて根のはたらきを高める土壌環境であることが、吸収率を高めるための直接的な施策となるのです。

基本編マーク 根の機能
茶樹に最適な土壌とは?

三相分布2-1-5.土づくりとは

土を耕すと容積が増えます。これは一時的に土壌の間隙が増えたということ。土壌の硬度(やわらかさ)と、三相分布を長期的に保つことが土づくりです。土をやわらかくすることによって、次のような好影響があります。

根が伸びやすくなる
水の通りがよくなる
空気が入る(根の生育)
微生物の生育環境が整う

土づくりによって茶樹には、1)根の活力が増す2)根量が増える等の変化が見られるはずです。

土の良い状態を長期的に保つためには、まず土壌に有機物(たい肥、刈草、稲わら、その他有機素材)を投入することです。有機物は土壌中の微生物によって分解され、養分は茶樹に吸収されて、また微生物を増やすという循環を行い、土壌の「肥えを持つ力」(保肥力・保水力)が増していきます。有機物の投入により、土壌の腐食が増え分解する力(交換容量)が高まり、地力ある土壌に変えていくという効果が得られます。また、ゼオライト、アヅミンなど土壌改良剤を施用し、肥効を高める方法もあります。

 

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 2月号もくじ 2-1:環境保全と施肥 2-2:春肥の与え方2-3:肥料の種類2-4:今年の気象から2-5:[造成]植え溝の作り方

 

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主催:カワサキ機工株式会社

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