10月号 2.花芽が及ぼす影響
-花が咲くのはそんなに悪いことか-

花と実による窒素消耗量
※1,000個/m2の花が咲いた場合。
10-2-1.花と実で茶樹は消耗するか?

では、花芽の分化から実を結ぶまでに、茶樹がどれほど栄養を消耗するのかというと、開花量が1,000個/m2として、花で窒素量約2kg/10a、実で約1kg/10a程度といわれ、年間吸収窒素量の約10%と推定した資料もあります。施肥削減の昨今では、消耗を避けたいのは言うまでもなく、すでに栄養状態が悪くなっている結果として花芽の分化が起こっているわけですから、吸収率を高める「地下部の改善」が第一の対策と考えられます。


灰色かび病
灰色かび病

10-2-2.花と灰色かび病

花芽の分化が及ぼすもうひとつの影響として、灰色かび病の発生があげられます。灰色かび病は、葉に落ちた花が付着して腐り、そこで病菌に感染して発生し、雨が続くと起こりやすい病気です。灰色かび病は、開花後から落花期と春に殺菌剤を散布する防除方法で防ぐことができます。

基本編ロゴ 灰色かび病


10-2-3.花が咲くと減収するか?

花芽の分化を起こした部位に小さな芽が出ることがありますが、伸びが悪く収穫の対象となる芽には生育しません。これが「芽数が減る」と言われる所以ですが、摘採や整枝によってあらかじめ咲かないようにしても、樹勢そのものが改善されなければ収量にそれほど変化はありません。花が咲くから樹勢が衰えるのではなく「樹勢が弱っているから花が咲く」のですから、花を咲かせないことが減収を抑える手段とは考えられません。


開花と新芽生育の関係
※1,000個/m2の花が咲いた場合。

●10-2-4.花が咲いても冷静に判断を

以上のように、花芽の分化が茶樹に及ぼす影響は、栄養分の消耗と灰色かび病の可能性の2つです。施肥削減の昨今では、花実によって消耗する窒素も少ないとは言い切れませんが、花を取っても窒素の消耗をそれほど抑えられるわけではありません。右グラフのとに差がないことからもわかるように、花が咲いた段階で除去しても翌年の収量にそれほど変化はないのです。したがって、花が咲いたことに神経質になるよりも、その影響を冷静に理解して適切な対処方法を考えることが大切です。

基本編ロゴ 花芽の分化と発育の過程
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10月号もくじ 10-1:花と生理生態 10-2:花が及ぼす影響10-3:恒久的対策を10-4:幼木園の花芽の分化

 

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