10月号 3.恒久的樹勢回復計画を
-花が咲いたら、まず原因追及から- |
花を咲かせないための手っ取り早い応急対策は、二番茶後に浅刈りなどの剪枝をすることでしょう。しかし、花がついたことの受け止め方によっては、剪枝が絶対的な方法とは考えられないはずです。つまり、栄養状態が悪いという明らかなシグナルを茶樹が発しているのですから、栄養状態を良くすることがいちばんの対策なのです。今まで行ってきたすべての茶園管理を総合的に見直さなければならないと茶樹から言われているようなものです。そこへ、秋を迎える大切な時期に葉面積を減らしてしまうことは、茶樹の生理生態上良い方法とは言えません。花芽をつけない目的でいたずらに浅刈りを繰り返しては、かえって更新効果が薄れ、健康状態回復という目的を果たさない場合があります。私は、浅刈りは連続3回までが限度だと思います。 |
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●10-3-2.花が咲いたら茶園の健康診断を 花芽の分化は、茶樹の健康状態のバロメーターです。花芽を取り除くような応急的な処置をとるよりも、茶園を健康な状態に戻すために、不健康になった原因を追及することに力を注ぐべきです。茶園全体のどの部分に花芽が多いか、気象災害はどうだったか、土壌の状態、枝茎の状態などを細かくチェックしましょう。 花芽の分化した茶園を観察すると、茶園の部分的に集中して花がついています。たとえば、傾斜地茶園の低い部分や、日照条件の悪い部分、あるいは過乾過湿の土壌など立地条件の悪い茶園に花芽が多く出ます。そうした立地の株は、根が浅く栄養生長がおさえられていると思われます。 |
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●10-3-3.茶園管理の総合的見直し 茶園全体の中で部分的に着花が多いと見られた場合は、まず地下部の環境が悪いと考えられます。根の分布が悪く根量が少ないと着花数が多くなりますから。その場合、地下部の状態を観察し、深耕、土壌改良など適切な処置を施します。 さらに、花芽が多くついた枝を観察すると、枝が細く分かれていると思います。これは、摘採・整枝でかからなかった頂芽、つまり、栄養状態の悪い芽に花芽の分化が起こります。ですから地上部は、伸びきれない細い枝が密生しないように、更新して枝の構成を改善し、栄養が十分に行き渡るようにします。 |
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また、地上部と地下部のバランスがくずれると、花をつける可能性が高くなります。地上部に対して地下部の生育が劣る場合、地上部の栄養状態が悪くなり、花芽の分化が起きやすくなる。これは更新によって解決できます。花芽の分化が著しい茶園で、原因追及をして地上部と地下部のバランスが悪いことが原因と考えられた場合には、更新して力のある枝をつくることが、樹勢回復の手段となります。更新効果によって、地上部に力のある葉が出てくれば根の吸収力も高まり、栄養状態が良くなって、さらに地上部と地下部のバランスのとれた生長が期待できます。 |
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●10-3-4.外的要因を克服する 干ばつ等への対策 |
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病害虫防除 茶園を観察してみると、健康な葉が数多くついている株の着花数は少ないはずです。逆に病害虫の被害にあった茶園では、栄養状態が不十分となり、花芽の分化が起こりやすくなります。適期適剤の防除を行い、葉を大切にして秋を迎えるようにしましょう。 |
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●10-3-5.樹齢が古い茶園で続く花芽の分化 樹齢が古くなった茶園では、花芽の分化が起こりやすくなります。これは、次世代へと種を繋ぐための生殖生長へと進むからだと考えられます。樹齢が古くても深耕などによって改善できればよいのですが、花芽の分化が多く、樹勢が著しく低下した茶園では、改植も視野に入れて改善策を考えるべきです。 |
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10月号もくじ |10-1:花と生理生態 |10-2:花が及ぼす影響|10-3:恒久的対策を|10-4:幼木園の花芽の分化| |
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