6月号 1.今年の一番茶木村評
-来年の一番茶のために-


乗用型の摘採風景6-1-1.開葉後の冷涼な気象が影響

今年(2001年)の一番茶は、前年に比べて1週間程早まるだろうと予測されていましたが、開葉前後にに冷えこんだ日があり例年よりも2〜3日早い摘採となったようです。3月末日に極端な低温となりましたが、凍霜害は局部的な被害に留まりました。その後は比較的順調にあたたかくなりましたが、4月下旬から曇天低温の日が続いて開葉が遅れ、当初は早まると予測されていた一番茶摘採が平年並みに終わった年でした。
生育全般] 今年の生育については、地域によって異なりますが総体的に順調とはいえないと思います。摘採時期になって下位葉が硬くなり、出開きがそれほど進まないのに茎尻の目立つ芽が見られました。この出開き熟度が若いのに下位葉が硬化した原因は試験をしなければわかりませんが、芽の成長中に気温が低下すると細胞組織で空洞化が増加し、木化(組織が硬くなること)が起こりやすいのではないかと想像されます。
また、鹿児島県では「ゆたかみどり(早生)」の摘採が低温の影響で遅れ、「やぶきた」と重なった所もあると聞いています。南部地方は全天候型摘採で計画摘採が行われていますから、数日の生育差で組まれている品種にズレが生じると硬化による品質低下の原因となります。
どうすべきだったか] こうした生育状況にあって、収量が少ないのに価格が上がらない厳しい市況となりました。しかし、このような場合に収量を求めて摘採を遅らせると、さらなる品質低下を招くおそれがあります。あくまで品質を重視した摘採を心がけ、芽伸びを入念にチェックして摘採適期を見極めることが重要だったのだと思います。


品種茶イメージ6-1-1b.摘採計画と品種と天候

雨の日に摘採をしないと、いくら品種組み合わせによる計画摘採をしようとしても、雨が降れば計画が崩れることになります。しかし私は、雨によって品質や価格が下がったとしても、それ以降の摘採計画を重視することによってトータルでの経営成果はあがるのではないかと考えています。ですから、品種組み合わせによる摘採計画は、詳細な摘採計画どおりに可能かどうかよりも、全茶期を通じての経営成果が高まるかどうかという広い視野で考えてほしいと思います。


窒素と根系分布
 
6-1-2.芽伸びが悪かった原因は?低気温、根の吸収率、樹齢

芽伸びが悪かった場合、原因として前記のように開葉後の気温が低かったことがあげられます。加えて降水量が平年よりも少なく、肥料が効かなかったとの声も聞こえてきます。では、そうした気象の影響に対して管理上対策できる要因はなかったのでしょうか。
ひとつには、肥料の吸収率を高める努力が、管理上できることとしてあげられます。
年間施肥基準では窒素吸収率40%として計算されています。この吸収率に達していれば茶樹の必要量 を満たしているはずで、問題は施肥利用率です。根の吸収率を高めて適度な施肥を行えば、濃度障害がなくなって茶樹のためにもよい。実際、施肥削減して以降の茶園を見てきて、細根分布が量は増えてきていると思います。ただ表面に多く分布しているように感じました。
利用率を高めるには、表面だけでなく垂直方向に深く根が張らなければいけません。そのためには、土壌の物理性の改善を十分に行わなければ絶対量 の根量が増えないし、根の分布形態に偏りが出ます。垂直分布が悪いと、アンモニア態窒素の時には吸収されても、硝酸態窒素に変化した後の取り込みができない場合が考えられます(図)。
また、根が深く細根量が増えると、夏の干ばつに対しても強くなって安定生産ができます。
加えて、静岡県については、樹齢が古くなっているという現状があります。若い茶樹に比べて高齢な茶樹ほど再生能力は衰えてきますから、その影響もないとは言えません。

基本編ロゴ 各県の施肥基準
根系分布
茶樹の樹齢について
施肥の溶脱

根系分布6-1-3.根量 分布を広げ、吸収率をアップする

ECセンサーの結果を見ると、現在の施肥量で土壌中の養分濃度は満たされています。そこで良質多収をのぞむには、根の吸収率を高める土壌改善が大切になってきます。 根の吸収率を高めるには、根の垂直分布を良くすることです。そして、活力ある根をつくるためには、土壌を深耕して土壌の膨軟性、通 気性を高めることです。そして、その軟らかさを保つために有機物をすき込むみます。 最近は乗用型茶園管理機導入による踏圧も心配されています。また、乗用型茶園管理機を導入していない茶園でも、自然なち密化は進みますから、10年に1回位 は、80〜100cmほど深耕し有機物をすき込む「畦間混層耕起」を行う必要があると思われます。

基本編ロゴ 畦間耕起と細根の生育
畦間混層耕起とは
根の機能
乗用型茶園管理機の踏圧について


6-1-4.来年の一番茶を考えた最終摘採を

来年の一番茶で良い結果を出すためには、今年の二番茶(最終摘採)時に早摘みを避けて遅れ芽をなくし、適期に浅摘みします。深さは1節残しておく。そうすれば、最終芽が揃って成熟して「はたらく若い葉」となり、来年の一番茶のために光合成を行って、養分を直接芽に利用させることができます。

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6月号もくじ 6-1:木村評 6-2:夏肥26-3:更新園整枝6-4:防除6-5:挿し木

 

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