挿し木で苗をつくる方法には、普通挿し、ビニール被覆挿し、ポット育苗があります。6月に挿し木を行い、翌々年3月(ポット育苗の場合は翌年の3月)に定植します。
苗をつくるには 一番茶または再生芽をつかって挿し穂をつくるので、植栽を計画している方はあらかじめ挿し穂のための芽を残しておきましょう。
ここでは、普通挿し木の方法を説明します。
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●6-5-1.苗床の土を準備する
挿し木苗をつくるには、育苗土と挿土を組み合わせて苗床をつくります。挿土には、保水性と通 気性のよい心土(赤土)を使います。発根させるところなので、根腐病等にかからないよう殺菌処理をします。育苗土は、肥料を含む肥沃な土を使います。
土はフルイにかけて、レキや土塊を取り除きます。
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●6-5-2.挿し穂は生育良好なものを準備
挿し穂は生育良好な枝から取ることが育苗のポイントです。株の両裾についた弱い枝を使わないこと。畦の中でも中央部の養分豊富な場所の枝を選んで使います。
昔は、中切りや深刈りをして出た再生芽を挿し穂に使いました。しかし、挿し穂を取るために更新するというのもむずかしいので、一番茶の芽をそのまま伸ばして使うことが多くなりました。挿し木する品種と更新が時期的にちょうど合えば、再生芽を使うのが良いでしょう。
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挿し穂の調整作業
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●6-5-3.挿し穂をつくる
一番茶の芽(または再生芽)から挿し穂をつくるには、右図のように2節2葉で下の葉から2〜3cm茎が残るようにします。このとき、株に近い部分は茎が木化して茶色くなってきていますから、その木化した部分と緑色の部分と半々になるよう調整します。芽がよく伸びている場合には、木化しかかった部分を中心に上下2〜3ほんの挿し穂をとります。
芽の上部は柔らかくて水分管理が難しいため使えず、古い部分を使うと発根が遅くていけないので注意して調整してください。 また、節間が短い場合には、3節2葉を挿し穂として残し、下の葉を除きます。
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●6-5-4.挿し木床の挿し穂間隔と挿し方
挿し木床は、右図のように床幅1.0〜1.2mの畦をつくり、条間12〜20cm、挿し穂の間隔2〜2.5cmで挿します。あまり密植しないよう注意してください。
挿す時には、下の葉の付け根が地表部にちょっとかかるくらいの深さ(3cm位)に挿します。
これは、 地表面に茎の部分だけで挿すと不安定になり、風や潅水によって穂が動いて穴があいて乾燥の原因となるためで、下図のように挿すと穂が固定されます。挿した直後は、十分に潅水してください。
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●6-5-5.日陰に苗圃をつくらない
潅水を省略させたいために日陰に苗圃をつくると、発根や発根後の生育で悪い結果 を与えます。日当たりの良い場所に苗圃をつくり、遮光しましょう。個人の場合はトンネル式が多く、共同育苗の場合は棚式やハウスで管理しやすい苗圃をつくります。
また、ビニール被覆で完全に覆って、潅水の省力化をはかる方法(無潅水挿し木)もあります。その場合は、遮光率をある程度強めた方が安全で効果 があります。
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●6-5-6.挿し木の管理の仕方
挿し木してから発根するまで1ヶ月ほどかかります。発根に最適な土壌の含水量 は、最大含水量の60〜80%。この間、乾燥させないように、挿し木床の水分管理を徹底して行います。晴天の日が続く場合は1日1回潅水してください。1ヶ月半ほどして根が出揃った後は、特別
乾燥しない限り潅水する必要はありません。
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育苗ハウス(鹿児島堀口製茶様)
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●6-5-7.ポット育苗の場合
ポット育苗は土を付けたまま定植するため根の損傷が無く生育も良好で、しかも定植作業を容易にできる方法です。6月に挿し穂して、翌年3月に9ヶ月生の苗木を定植することができます。
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