特集2.早期成園化
4:覚えてほしい仕立てのテクニック


ポイント■4-1.幼木の株のでき方

幼木時代に剪枝をする目的は、定芽を出すことです。幹の部分から出た芽は強く伸びて骨格となる枝ができます。栄養状態が悪いのに高い位置で剪枝をすると下右図のように側芽が多くなって枝が細くなり、望ましい樹形になりません。

早く株張りが欲しいために、広がった高い位置で剪枝したくなりがちです。しかし、高い位置で剪枝して芽を多く残すと、細い部分から側芽が多く出るため枝が弱くなってしまいます。深く剪枝すると樹体が小さくなってしまうように感じますが、段階的に大きくするのが早期成園化の技術です。良い枝をつくる仕立てのポイントは、2〜3つの芽を期待する程度の位置で行うことです。

●葉層の上、2〜3の芽を期待する高さが望ましい位置。 ●高い位置で剪枝すると、節を多く残すためたくさんの側芽を出し、結果的に枝が細くなり良い骨格はできません。

ポット苗植え付け四年目の断面図


仕立てのプロセス■4-2.機械摘み仕立てにするまでの剪枝イメージ

上記で説明したように各年の剪枝によって太い枝を出して骨格をつくり、早期成園化をねらいます。幼木の生育スピードは、土壌環境や定植後の管理等の環境によって大きく異なりますが、生育良好な場合の事例として、以下のような生育プロセスと剪枝の流れをイメージしてください。


■4-3.剪枝位置を判断するポイント

剪枝位置を決めるには、次の芽をどの位置からどのように出すかをイメージして剪枝するのがポイントです。定植2年目以降は、よく茶樹を観察してみてください。前年の仕立て位置の少し上に、剪枝で残された葉や再生芽の葉で「葉層」ができています。ここから新しい枝が伸びていますが、その枝は葉層が厚くて大きいほど良く伸びています。この葉層を残す程度に剪枝すると、栄養状態の良い太い枝が期待できて、強い骨格をつくることができます。この位置は、前回剪枝した位置からおよそ5〜7cm高い所にあたります。

枝を均一に幼木の生育過程では、枝の生育を均一にすることが重要なポイントです。中央の枝が徒長してピラミッド型になる場合が多く見られますが、それでは裾部の枝が弱くなり、成園化後に芽数の分布や芽の大きさなど芽の構成が乱れます。 こうした茶園で枝の太さを観察すると、中央付近が太く、裾部の枝が細くなっているはずです。そのような枝の不均一は、剪枝強度が均等に行われなかったために起こる現象で、中央の徒長しやすい枝を強く、側枝を弱く剪枝することで強さの均一化をはかります。


定植時の剪枝■4-4.定植時の剪枝

定植時

2年生苗の場合に定植時に剪枝する目的は、活着を良くすることにあり、その後の再生芽の生育に大きく影響します。剪定の位置は苗木の生育状態や側芽の状態を見極めて決めますが、おおよそ植え付け位置から15〜20cmの高さで剪定します。
剪枝の際には、枝の均一化を考えてカットします。ポイントは、主幹部の肥大徒長を抑えて主幹部を強く剪枝することです。側枝は弱くして弱い枝は2年目の剪定に残します。

●ポット苗の場合

ポット苗の場合は、植え付けした時点で出るのは定芽のみです。2節2葉さしですから、定芽2本が伸びたら2〜3節の位置で摘芯して側芽を出します。


2年目の剪枝2年目

2年目には再生芽が大きく成長し、樹高は数十センチ以上(50〜80cm)に達します。また、分枝数も定植時の2〜3倍に増え、着葉量は一挙に増加します。剪枝時期は一番茶前後ですが、生育状況が芳しくない場合や忙しい場合には、一番茶前に行うのが再生が早く有利です。
株をよく観察してみると、1年目の剪定位置から数cm上に葉層らしきものが見られます。この葉層を残して前年剪枝位置から5〜7cm先の位置で剪枝します。これは、新しい枝の下から2〜3節を残す程度で、2〜3本の側芽を期待するものです。 高い位置で剪枝した幼木園を多く見かけますが、剪枝位置が高いと芽数が増えて再生芽の生育が悪くなり、成園になった時に枝の構成が弱くなってしまいます。


3年目以降の剪枝3年目以降

3年目になると、さらに樹量や着葉量が増加して、枝の数も増えます。一般的に3年目で株張り面積率50〜60%に達し、株の中の枝葉が充実します。この時点で生育の早い茶園では機械摘みへの切り替えが可能です。
機械摘みに切り替えない場合、3年目の剪枝位置は、上記のポイントと同様に葉層を残す位置とし、前年剪枝位置から5〜6cm高い位置で剪枝します。生育が良く摘採が可能と思われた場合には、一番茶を軽く摘採してその後で剪枝をします。茶樹の生理生態上は、寒い日が過ぎて寒害を避け、3月下旬〜4月上旬(静岡県の場合で)頃に剪枝を行い、その後芽を伸ばすのが理想的です。


切り替えの判断■4-5.機械摘みへの切り替えを判断する

4年目には樹量が大きくなり生育内容が充実してきます。生育良好な茶園では機械摘みへの切り替えが可能で、次のように判断します。(1)株張り面積70%以上、(2)枝が剪枝位置のすぐ上の位置で8mm以上に肥大していること、(3)適正な枝の本数(1m当り60本以上)が確保されていること、(4)大型葉で着葉密度が高く着葉状態がよい、これらの条件が整っていれば機械摘み仕立てに切り替えできます。
生育不良と思われた場合には、3年目と同様に剪枝処理を行います。


■4-6.機械摘みへの切り替えは春か秋か

秋の切り替え機械摘みへの切り替えは、秋整枝時期に行う場合と春整枝時期に行う場合があります。切り替え時期の判断は、生育状態を観察して適した時期に行う必要があります。

●秋整枝で切り替えする場合
一番茶時期に剪枝し、二番茶時期に摘採をして、次の芽(三番茶芽)が徒長するようなら徒長枝だけを刈り落として、秋整枝の時期に機械摘み仕立てに切り替える整枝をします。このケースだと5年目から一番茶を機械で摘採できます。 秋に切り替えするのが一般的なのは、夏に伸びた芽が充実し葉量も多く機能的に活発な時期ですから、この時期に整・剪枝すれば翌年は芽数や枝も増え比較的均一に生育するからです。

春の切り替え●春整枝の場合
生育の良くない場合や寒害の危険性がある場合には、夏の芽を肥大成長させておけば、根の生育の面からもいい結果が得られます。翌年から機械摘みにできる生育状態ならば、二番茶、三番茶の芽を徒長させずに、枝を揃えるために摘心または軽く整枝を行います。この処置では、秋の時点ではあまり伸びていない状態で枝数が増えます。それをそのまま越冬させて翌年の一番茶前、3月に機械摘みへの切り替えの整枝を行い、一番茶を機械摘みします。( 生育が極めて悪い場合には、夏の剪枝もやめて徒長させることもあります。)


■4-7.ポット苗の仕立て方法

ポット苗の場合は2年生苗と年次差がありますが、仕立て方法については普通苗と同様に判断して行います。


裾部枝の処理
年に10〜20cmスライド

■4-8.裾部に垂れた枝の処理

裾部の垂れた枝は非常に弱く株面をつくるには不適当な部分ですから2年目、3年目の仕立て段階で切り落とし樹形をつくります。2年生で株元から20〜30cmの位置から45度の角度で刈り1年に10〜20cm位づつスライドしていきます。そうすると、成木園に達した時点で裾部の高さは30〜40cm、畦間が20cm程度確保され、理想的な樹形となります。

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特集2もくじ 2-1:骨格をつくる2-2:地下部環境2-3:苗木と植え付け2-4:仕立て2-5:防除と災害対策2-6:幼木園の施肥

 

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