特集2.早期成園化
1:茶樹の骨格をつくる
2001/02/16牧之原にて
■1-1.早期成園化とは早く収穫するだけが目的ではない

新規造成地に植え付けする人や古い茶園の改植を考えている人にとって、茶園で経済効果をあげるまでの期間を短くすることが望まれます。今の時代は早期成園化の技術が進み、ポット育苗を始めとした総合的な育成技術を着実に実行することで早ければ4年目からの収穫が可能となりましたが、それには正しい知識と適切な対処が必要となります。
ここで 私の言う経済効果とは、1日も早い摘採だけを目的とするのではなく、長期的に経済効果を高める骨格づくりを重視しています。幼木を育てるにあたって、植え付け後6〜7年目で更新しなければならないような茶園をつくっては困ります。しかし、私が現場で目にする限りでは、骨格となる枝の構成ができていない幼木園が多く見かけられます。

早期成園化とは、緑被率を早く拡大することを目的としながら、長期的に良質多収生産が持続できる成園づくりを目指さなければなりません。そのためには、茶樹の骨格である幹や枝の充実、根量の増加、拡大など基本的な幼木園管理を技術力と観察力、実行力をもって取り組まなければ成功しません。


ポイント■1-2.幼木育成が上手な人ってどんな人?早期成園化のポイント

2人の生産者が幼木園管理を行ったら、その人の資質や技術によって生育状態が違ってくるでしょう。「将来いい樹勢の茶園をつくりたいから幼木をしっかり育てよう」と考えるAさんと、「植えておけばなんとか大きくなる」というBさんとでは、明らかに生育に大きな差が出ます。Aさんは子育てのポイントといえる要領や知識や技術をもっていて、なおかつ実行しているのです。

早期成園化の技術とは、(1)地下部の生育環境を整えること(2)地上部の効率的な栽培技術の2点に分けられます。そのポイントとは、大きく分けて右の通りです。

現代の早期成園化技術というのは、ポット育苗を始めとして施肥や防除の技術が示されています。植え付け前に生育に適した土壌環境を整えること、茶樹の個体と生育にあった肥培管理、病害虫防除や干ばつ等災害対策の徹底、幹枝の骨格をつくるのに適切な剪枝を行うことで早期成園化が可能となります。
( 次ページ以降で詳細を説明していきましょう。 )


■1-3.成木園の概念

ここでいう成木園とは、経済効果を表す時点という意味で使われています。これまで2年生苗を植栽してきた指導上では、およそ6〜7年で成木になると言われてきました。早期成園化といっても、茶樹の生理生態上で言えば、年輪は3年なら3年しか生育していないわけですから成木とは言えません(生理生態上の成木園とは約7年くらい)。 ですから、早期成園化とは摘採面の面積が成木園並みになるということで、摘採面積が土地面積の80%程度を確保できたことを言います。


 

■1-4.収穫できるまで何年かかる?(樹齢の数え方)

定植時期は3月が一般的です。定植した年が定植1年目ですから1年生苗と呼び、2年生苗(1年9ヶ月)を植えたら樹齢は2年となります。たとえば2年生苗を植えた場合で「4年目の5月で摘採を始める〜」というと、定植から3年2ヶ月、挿し木してから4年11ヶ月にあたります。造成に1年かけたとして4年目から収穫ができた場合、右図のように5回収穫を休ませたことになります。

■1-5.ポット育苗の効果

ポット育苗と2年生苗定植との差は、苗木の年齢から挿し木した時点から考えれば、ポット育苗の方が1年早い樹齢で収穫できます。ポット育苗で植栽した場合、最速で3年で60%くらいの収穫量、4年目で成木園並みの収穫量に達します。

定植から収穫までの年数は同じですが、ポット育苗のメリットは、活着率が高いことと育苗中の管理がしやすいことです。ポット苗は生育の中断がないため順調に生育します。2年生苗は移植に伴う生育の中断のデメリットが大きく、植え替えによる損傷は累積収量から9年ほど影響した事例調査結果があります。また2年生苗は、定植時に植え溝掘りや剪定、潅水の労力負担がありますが、ポット育苗ならそうした労力負担が軽減され、技術的な差が出にくいという利点があります。

基本編ロゴ ポット苗と一般苗の生育量の関係
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特集2もくじ 2-1:骨格をつくる2-2:地下部環境2-3:苗木と植え付け2-4:仕立て2-5:防除と災害対策2-6:幼木園の施肥

 

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