特集2.早期成園化
2:地下部の環境を整える


造成■2-1.土壌の物理性を改善する

新規に造成する茶園は、根の生育に適した環境を整える必要があります。土壌の物理性とは、通気性と透水性、保水性、膨軟性などの条件で、ち密化した土壌や排水不良の茶園では早期成園化は望めません。とくに乗用型茶園管理機を導入する茶園では踏圧によるち密化が進むので新植時に充分な膨軟性を確保しておくことが大切です。
物理性の改善には、 土壌を深く(1m以上)耕起して風化させ、充分な堆きゅう肥、ロング肥料など養分補給のための肥料を投入し、膨軟性を維持できる土づくりをします。有効土層を深く確保することで根量が増え、茶樹の活発な生育につながります。

基本編ロゴ 酸素不足が最も大敵
畦間土壌の耕起と細根の生育


酸素と根グラフ■2-2.生育に必要な酸素量

根は酸素を吸収して炭酸ガスを吐き出す呼吸をします。そのエネルギーによって土壌中の養水分を吸収しています。中でももっとも活発に呼吸して吸収活動を行っているのは細根です。そのため、土壌の通気性は絶対必要条件であり、酸素が少ないと細根の活性が衰えて生育が抑制され、極度に欠乏した場合には枯死することもあります。ち密化した土壌や排水不良の茶園では、早期成園化は望めません。
茶樹が必要とする酸素量は10%以上で、生育が盛んな時期には15〜20%以上が必要とされます。


物理性イメージ■2-3.透水性・保水性・膨軟性の維持

●透水性
透水性が高い土壌は、土壌中の水分が浸透して余分な水分が排除できる状態です。茶園の一部に水を注いだ時に短時間で多量の水が浸透する状態がのぞましいです。すぐに水たまりができるようでは透水性の悪い土壌であり、土壌を構造的に改善する必要があります。

●保水性
保水性は土壌に保持される水分で、茶樹が蒸散、光合成、呼吸を行うにあたって欠かせない条件です。保水性は土質によって異なります。砂や礫を多く含む砂礫土は保水性が低く、黒ボク土、褐色土などは腐植や有機物が豊富で保水性が高い。保水性を高めるには、土壌を深く耕起して有機物を投入して土づくりに努めることが大切です。

膨軟性
根の生育に膨軟性は欠かせません。根系分布を広く深く確保するには、深耕と有機物の投入によってして膨軟性の維持に努めましょう。

基本編ロゴ 土づくりとは
深耕の目的は物理性の改善


土壌の化学性改善基準
項目
改善基準
透水係数 10-4cm/sec以上
ち密度 20mm以下
pF1.5の気層 18%以上
pH(H2O) 4.0〜5.0
電気伝導度 1mS以下
塩基含量CaO 60〜100mg
〃 MgO
20〜40mg
〃 K2O
25〜50mg
有効態 P2O5 20〜50mg

■2-4.土壌の化学性を改善する

土壌によって化学性は異なりますが、よほど特殊な土壌でない限り土壌改良によって生産が可能であり良質茶の生産も期待できます。新規造成茶園は深い層の土を掘り起こしますから、入念に土壌診断を行ってから土壌改良を行います。

アルカリ性土壌の場合は風化によって酸性度を高め、強酸性土壌は石灰類を施用し肥料種類の選択によって改善します(目標pH4〜5)。風化させるには、土壌を耕して地面の表面積を大きくして、雨による酸性化を期待してそのまま放置します。
土壌成分では、苦土石灰の不足した茶園が多く見られますから、土壌改良資材を利用して改善に努めましょう。また、深く痩せた層の土を掘り起こした土壌は腐植が極めて低く、場合によってはEC値0.1以下にまで下がっています。有機物の投入によって腐植を高める手当てを行います。

基本編ロゴ 土壌改善の方法
土壌診断の見方
新植園と改植園の差
頁岩性土壌の改善
ロゴ [7月号-5]土壌診断と土壌改良
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特集2もくじ 2-1:骨格をつくる2-2:地下部環境2-3:苗木と植え付け2-4:仕立て2-5:防除と災害対策2-6:幼木園の施肥

 

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