9月号 4.秋整枝の注意とテクニック
-秋整枝で茶樹の生態を利用した問題解決を-

小型芽をカット●9-4-1.無理して深く整枝しないで

適切な位置よりも深く整枝すると小型芽までカットされて越冬芽も小型化し、翌年一番茶として有効でない芽をつくることになり収量や品質に影響を及ぼします。したがって細い枝となる小型芽からは頂芽を得るように、秋整枝の深さを適切な位置で行うよう調整します。

芽数の増加は平均的な秋整枝でおよそ1.5倍になるとされています。


病害虫被害時の細い枝 ●9-4-2.秋整枝がダメージとなる茶園の対策

北部や中山間地など気温が低い地域では、秋整枝で深く整枝すると寒害をうける可能性があります。そのような茶園では、秋整枝をやめて葉量を確保して冬を越すことにより越冬芽が保護されます。それには春整枝にするのが有効な対策です。春整枝にすると、萠芽期が遅れて凍霜害の被害が軽減され、生産を安定させることができます。

また、更新園で再生芽の生育が良くない茶園や、クワシロカイガラムシなど病害虫の被害で回復が遅れている茶園では、秋整枝は徒長芽のみカットして冬を越してから春整枝を行った方が樹勢回復のために効果的です。

基本編ロゴ 開葉するとどうなる?
寒風害にあいやすい場所


摘採時期のコントロール●9-4-3.秋整枝の早晩による一番茶摘採時期の調整

一番茶の摘採時期を集中させないテクニックとして、秋整枝をずらす方法があります。その効果は2〜3日とわずかですが、茶園ごとの立地や品種を考慮して秋整枝の時期を計画的に配置すれば、より摘採集中を避ける効果が得られます。開葉の危険性が無い範囲で早めの時期から計画的に秋整枝を行うのがよいでしょう。 また、秋整枝と春整枝を組み合わせることで、さらに摘採時期に4〜5日の差を出すことができます。


傾斜地茶園での秋整枝時期●9-4-4.傾斜地茶園の芽の不ぞろいを解消したい

傾斜地の茶園では、冷たい空気が山側から谷側へ流れて谷側へと溜まりやすいために、同じ畦で芽の生育差が出てしまう場合が多くみられます。これは、とくに春先の低温が影響していて条件によっては5〜7日の摘採日の差が出ます。
この差を短縮するには、秋整枝の段階で時期をずらす方法があります。谷側(遅い方)の面を15日ほど早く整枝すれば、山側(早い方)の面との差を2〜3日短縮でき、摘採の作業効率をあげることができます。

基本編ロゴ 凍霜害の部分被害


整枝は丁寧に●9-4-5.秋整枝は丁寧にやろう

秋整枝の深さを均一に行うことは、一番茶の芽を均一にすることにつながる重要な処理です。可搬式の場合はレール式のようにシビアな深さは望めませんが、能率本位にならないように丁寧な整枝作業を心がけましょう。摘採面の葉に傷をつけるのも、その後の芽の生育に影響を与えます。整枝刃の手入れをして切れをよくし、作業速度と機械の回転速度のバランスをとって作業してください。

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9月号もくじ 9-1:仮整枝 9-2:秋整枝の時期9-3:秋整枝の深さ9-4:秋整枝の注意とテクニック

 

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