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地名のお話

第3回『峠と境−沓掛・三郡山・四郡橋』-1

1.峠の旅のなごり「沓掛」

 

沓掛坂(掛川市)

日坂から国道1号線を横切り、ヘアピンカーブを曲がって二の坂を上ると、事任(ことのまま)八幡宮のお旅所、日乃坂(ひのさか)神社があり、そこから急な坂を上ると沓掛集落があります。
 この坂を『遠淡海地志』では「沓掛坂」と呼んでいます。急な坂を上ったところに、十戸ほどの小さな集落があり、沓掛稲荷が祀られ、江戸時代には浄土院という寺があったそうで、古くからの集落であるということがうかがわれます。

さて、この沓掛という地名、この名前は各地に多くあり、清水市の薩垂峠(さったとうげ)には沓掛明神が祀られていて、ヤマトタケルの馬の沓を掛けたところであると伝えられています。また、駿東郡三ヶ日町平山の峠道には、沓掛の松があります。

馬沓

馬を休ませ、馬の沓を替えてから、古い沓を松の大木の上に放り投げ、なるべく高い枝にひっかかるようにみんなで競争したといいます。この「沓掛」または「屈掛」という地名には、全国の峠道に多くみられ、坂道にさしかかったところで旅の履き物をあたらしく履き替え、古い沓を山の神にそなえて旅の安全を祈る、という意味があります。「そろそろ履き物を替えた方がいいよ」という教えが、屈掛というちょっとユーモラスな願掛けの風習として全国に広まり、人々に安全な旅を伝えてきたのでしょう。

全国に見られる沓掛

 沓掛という地名は、茨城県猿島町、栃木県今市市、同黒磯市、埼玉県岡部町、長野県青木村、同軽井沢町、愛知県瀬戸市、同豊明市、三重県磯部町、同関町、滋賀県愛知川町、同西浅井町、京都市西京区、奈良市、和歌山県下津町、大分県大田村、宮崎県清武町などにあり、すべて峠の坂道の地名です。 また 浅間山麓には沓掛宿があります。
 

 

参考文献 『東海道小夜の中山』 中部建設協会
  『地名の由来を知る事典』武光誠著 東京堂出版

三郡山と四郡橋

 

地名のもくじ 第1回 第2回 第3回『峠と境−沓掛・三郡山・四郡橋』 第4回 第5回 第6回  

 

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