特集1.品種
3:品種選定のしかた |
■3-1.早中晩の組み合わせ 品質収量ともに同じペースでいくのが理想です。「美味いお茶を安く生産する」という目的をもてば、規模を大きくして生産コストを削減するのが第一に必要になります。鹿児島などの早場所地帯では、早く採ることが経済効果につながりますから早生品種を重視します。南部の早場所では、早生品種を50(安定生産を考えると30〜40)%、中生を3割、中晩生品種を2割程度にするのが、経済面でも労力配分の面からも適当だと思います。早場所は価格の高い時期に摘採できるのが地域特性ですから、晩生を多くするのは歓迎されません。 また、中山間地や遅場所では、早場にはなれない地域性から、品質重視の品種を選ぶことになるでしょう。早晩構成でいえば、早生3:中生5:晩生2、くらいでしょうか。 やぶきたの後半は硬化して品質が落ちます。その分を中晩生品種で収穫すれば、品質的には良いものが収穫できます。しかし、現状の経済においては、かならずしも品質本位の評価がされません。やぶきたを硬葉にして量を出した方が儲かる場合もあるのが現状です。ですから、一概に早中晩だけの判断で入れるのも疑問があります。経済性を考えて、生産の安定性や品質などを総合的に考えることが大切です。 |
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■3-2.正確な情報を集めて判断する 品種の情報は、試験研究機関や農協などでもっている品種のデータが基本となります。品種は主として国や地方の研究機関で育成されたもの、また生産者が長い経験から固体選抜されたものなどが、登録され、その品種の特性や注意点、入手
方法などが公開されています。 また、各県で「奨励品種」が定められていて、それらは地域に合った品種が選ばれていますから参考にしましょう。 |
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■3-3.試験圃場で品種の適合性を検証しよう 導入候補の品種をさらに絞り込むとき、その品種が自分たちの立地に合うかどうかを検証します。私の体験からも、富士火山灰土壌で育成した「まきのはらわせ」と牧之原の「まきのはらわせ」とでは、歴然とした生育、品質の違いがありました。これは、気象条件や土壌によって特性の出方が変わるためです。 ですから、品種導入にあたって理想的な方法は、地域で試験圃場をつくって試験栽培をすることです。研究機関の情報をもとに選定した候補品種を実際に育成してみて、まずは地域の気象条件や土壌に適した品種かどうかを検証します。さらに、品種の特性や品質を自分の目で検証し、できれば試験的に流通に出して反応をみることによって正確な情報収集につながります。 |
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■3-4.品質を検証する 生産時の特性と同時に、製品として価格に反映される要素はすべて検証する必要があります。葉の大きさ、軟らかさ、形状、葉色といった外質と、味や香りの内質です。とくに私は、味よりも香りを主体に考えてほしい。栽培方法で香りを生みだすのは、私は無理だと思っています。香りは品種と土壌気象条件によるものですから、品種選定のときに香りにこだわってほしいのです。 また外質ももちろん重要な要素です。内質はほどほどに良い結果でありながら、葉色が黄色いために普及しなかった品種がありました。市場にどう評価されるか、売れるお茶になるかを見極めなければなりません。 |
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■3-5.幼木と成木の違いに注意 品種の特性は消滅することはありませんが、成木園になったとき、 あるいは製茶方法によって、その特性の現れ方が変わります。幼木 時代には非常に品質がよかった品種でも成木園になって分枝数が増え、芽数が増えて状態は変化します。
その場合、品種によって機械摘採にしてから年次経過と共に極端に芽伸びが悪く生育、収量が落ち込んでしまい期待した成果が得られないことがあります。この状態はその品種の特性から適地性、適応性が狭い品種と判断されます。したがって、幼木期の状態だけで
良否を判断することは危険です。製品となった場合の評価が大事ですから、関連する情報や実際面の観察にこだわることも必要です。 |
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特集1もくじ |1-1:なぜ今品種|1-2:地域特性を活かす|1-3:選定の仕方|1-4:品種構成への期待|1-5:実際に導入するには| |
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主催:カワサキ機工株式会社
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