7月号
1.摘採すべきか?三番茶
-三番茶摘採の可否を考える- |
●7-1-1.三番茶の経営的判断 三番茶は茶農家の経営面からみると、年間収入に占めるウェイトは低く、30日程度と短期間に生育するため収量は一番茶の40〜50%ほどで、市場での単価も一番茶の5分の1程度に過ぎません。 |
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三番茶は、夏の暑い時期に生育して7月〜8月上旬に摘採適期を迎えます。しかし、一・二番茶の摘採で樹体内の栄養分が消耗して、高温の期間が長く続いた中で生育した三番茶の芽は、硬くて節間が短く、小型芽が多く見られます。このように「良い芽ではない」と判断される場合は、樹勢が低下していると考えられますから三番茶の摘採は控えた方がよい。 一方で更新した茶園や樹齢の若い茶園では、摘採可能な良い三番茶の芽が得られます。この場合は浅めに摘採する方が翌年の一番茶にも好影響を与えますから、「摘採する」と判断するのが良いでしょう。 |
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右のグラフは、静岡県内の生育良好園と中位園で、三番茶を摘採した場合と摘採しない場合とで翌年の一番茶収量について比較したものです。数値を見て明らかなように、生育良好園では三番茶摘採によって翌年の芽数が増え、一番茶の収量が増加します。しかし、中位園では、三番茶摘採によって翌年の収量が減少し結果的に減収につながります。 |
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●7-1-4.秋までに葉層を確保する 三番茶を摘採しない理由は、茶樹の生育過程において秋の光合成が活発な時期に葉を十分に確保しておくことが大切だからです。葉が生育しやすい7〜8月に新しい葉を確保しておけば、10〜11月の光合成が活発な時期に葉が十分に養分生成を行い、樹勢のよい茶園となって来年の芽の生育に好影響を与えます。三番茶を摘採しても、四番茶が十分に生育して秋にはたらく葉となることができればよいのですが、そのような四番茶は樹勢が良い茶園でなければなかなか求められませんから、長期的樹勢維持を考えて、現在三番茶を摘採している茶園でも、一時中止して樹勢回復を図るべき茶園が多くあるように思われます。 |
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●7-1-5.どこがボーダーライン?摘採の判断 では、三番茶摘採可否のボーダーラインはどこにあるのか。三番茶を摘採する条件として、1)十分に伸びた良い芽が収穫できること 2)葉量、葉色、枝の構成が良く、完全葉が密生していて葉力のある生育良好な茶園であること 3)摘採後に出る芽が秋までに成熟すること。以上の3つがあげられます。摘採するかどうかを決めるには、まず三番茶の芽の状態を観察して、秋までに成熟した葉を求められるかどうかを判断します。 [判断] ※葉が成熟硬化するにはおよそ2ヶ月必要です。 |
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三番茶摘採をやめる理由は摘採の労働に対する収入の低さだけでなく、「茶園に葉を残す」という重要な目的をもっています。三番茶の摘採をしない場合、表面に残す新しい葉は秋にはたらく重要な葉なのです。秋に豊富な葉面積を確保していた茶園と、無理に三番茶を摘採して四番茶芽が十分伸びずに不完全葉が多い状態で秋を迎えた茶園とでは、翌年一番茶の収量に大きな差が出ます。 |
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●7-1-7.花芽をあまり気にしないで 「花芽がついてしょうがない」と三番茶摘採をやめた茶園でよく聞きます。たしかに三番茶を摘採すると花芽がつきにくくなります。しかし、花芽の分化が起こる原因は樹勢の低下です。茶樹に力が無いと栄養生長が阻害されて生殖生長へと移行するために花芽がつくのです。ですから、三番茶摘採によって花芽が出ないのは、6〜7月に分化した花芽が摘採によって取られただけで解決にはなっていないのです。無用な浅刈りや無理な摘採を繰り返さずに、茶園管理による根本的な樹勢回復に努めることが必要です。 |
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7月号もくじ |7-1:三番茶 |7-2:摘採|7-3:深耕|7-4:干ばつ|7-5:土壌診断|7-6:土壌改良|7-7:秋肥・防除| |
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