7月号 4.干ばつの被害と対策
-有効土層を深くする長期的な対策を-
干ばつは5月号-7に掲載しています。ここでは、被害にあった場合の対策を含めて再度お話しします。


7-4-1.干ばつとは

真夏の気温が上昇して雨量が少ない季節には、干ばつの被害が心配されます。茶の生育温度は20〜28℃で、この間であれば気温が高いほど生育良好となり、気温が30℃以上になると生育が抑制されます。日本の気象は36〜37℃まで上昇しますが、この高温が継続するわけではなく時間的には短いので、私の経験上それほど多発することはありません。(近年では、静岡県で平成8年に干ばつの被害が発生しています。)ただし、長時間高温が続いた場合には、日焼けなどの被害があります。

基本編ロゴ うなだれた芽はだいじょうぶ?
日焼けの被害

7-4-2.干ばつを判断する

被害に対して冷静に対処するには、適切なタイミングで干ばつの可能性を知ることです。しかし、潅水の必要性は茶園を見て外見から判断することはできませんから、pF値という数値で判断します。pF値とは、土壌の中に含まれる水の吸引力のことで、通常はpF値=1.5くらい。pF値このpF値が2.3以上になると「潅水が必要」と判断されます。pF値は、ほ場管理システム(茶園キーパー)を導入している所で計測され、危険値になると指導機関から発表があります。 しかし、pF値が2.3以上になっても茶園の外見上の変化はすぐに現れません。植物に水分が不足してくると初期の萎凋(イチョウ・しおれ始めのこと)があり、これが進行すると萎凋点に達して初めて症状が現れてきます。初期萎凋の段階に入る前に潅水する必要があるため、症状が現れなくてもpF値を基準として潅水の判断をするのです。

pF値を知ることができない場合はどうしたらいいか。初期萎凋の段階は外見ではわかりにくいのですが、葉のツヤや色が悪くなってきます。しかし、これは高温が原因の場合もあるので、畑を掘ってみて20cm位まで全く水気が無い状態であれば、潅水が必要と判断します。


7-4-3.高温干ばつの被害にあいやすい茶園

干ばつへの耐久力は有効土層が深いほど高まりますが、土壌の質によっても違います。砂壌土やレキ質土壌などでは保水力が低く、黒ぼく土壌は保水性が高い。土壌の保水性は、有機物を投入することによって高めることができます。また、投資を必要としますが、干ばつの被害が多発する茶園ではスプリンクラーや潅水パイプの設置も考えられます。 また、樹齢の古い茶園では障害に対する抵抗力が弱いため被害にあいやすく、立地としては盆地などの日だまりになる茶園や、砂地で風が吹きさらしになる茶園は干害が発生しやすいので注意してください。


干ばつを防ぐ7-4-4.干ばつの被害を未然に防ぐには

長期的には、地下の深いところの水分を利用するように有効土層を深くすることがいちばんの対策で、有機物の投入や土壌の三相構造を良好にして根を深くはらせる茶園づくりがもっとも重要です。
次に、干ばつから保護するには、畦間に敷き草を敷いて土壌水分の自然蒸発を防ぐ方法があります。 さらに進んでpF値が高くなり、干ばつの可能性が高くなった場合には潅水する必要性が出てきます。潅水する場合、水量は1回に20t/10a(20mm)で、朝か夕方に行います。この量を1度にやらずに、4〜5日に分けて(4t/10a位づつ)行っても効果が得られます(間断潅水)。

基本編ロゴ 茶樹が必要とする水分量


被害の処置7-4-5.干ばつの被害にあった場合はどうする?

干ばつの被害にあったら、次のように処置します。落葉した場合は、そのままおいて秋の回復を待ちます。枝枯れが見られる場合は、被害の位置を確認してその下で剪枝します。これは早めに処置して次の芽を早く出して秋の回復に間に合わせること。そして、全面的な被害の場合には、被害位置を確認してその下で整枝します。 干ばつの被害にあったら、防除をしっかりやって葉を大切にして回復につとめます。被害によっては秋整枝をやめて春整枝にする方法もとってください。


7-4-6.干ばつの影響

干ばつにあった年は、被害時が三番茶の成長期にあたるため、少なからず翌年の一番茶に影響します。8月に被害をうけると10月までに回復できないため翌年への影響が大きい。目に見えるほど深刻な被害では、3年位後遺症が残る場合もあります。

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7月号もくじ 7-1:三番茶 7-2:摘採7-3:深耕7-4:干ばつ7-5:土壌診断7-6:土壌改良7-7:秋肥・防除

 

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