特集3.茶園観察に出かけよう
1:茶園管理の成果を確認
生産者の方との対話は貴重な情報源

2001年4月6日。萠芽期〜2葉期を迎えた静岡県西部の茶園に出かけました。この時期は今年の収穫だけに目を奪われがちですが、木村塾らしく茶園管理の切り口で、摘採時期の茶園観察についてお話ししましょう。

■1-1.茶園管理の成果としての摘採

2001年の新茶時期をどのように迎えていますか。
永年作物である茶生産においては、継続する茶園管理が長期的経済性を大きく左右します。ですから萠芽〜摘採期は、年間を通じて、あるいは数年計画での樹勢回復において、その成果をチェックする重要な時期なのです。 茶園が自分の描いた通りの生育を遂げているかどうか、違っているとしたら問題点はどこにあるのか。萠芽から摘採までの時期にじっくり茶園を観察して、成果を冷静に見つめて正しい原因追求をすることが、来年以降の管理計画を立てる重要な情報となります。そして、今年の経済性だけを考えた摘採と、来年以降の樹勢を考えた摘採とでは、長期的茶農業経営において大きな差が出てくるのです。


左:悪い芽/右:良い芽

■1-2.芽の伸び方を観察する

栄養状態の良い芽を多収穫することが茶業経営における目標です。みなさん茶園を観察したら、まず摘採面の芽を総合的に見て「よく伸びているな」「芽伸びが悪いな」などと感じることと思います。
一葉期以降、一枚一枚の葉がどのような出方をしているか、葉の色つや形は良好か、軸は太いか等を観察します。軸が太く葉が大きくて色つやが良く、葉柄角度が狭い芽はよく伸びる芽です。
よく伸びた芽は収穫時に12〜13cmの長さに達し、1つの芽の重さが一芯三葉で刈って良い品質が保てます。しかし芽伸びが悪い茶園は7〜8cmで止まってしまい、品質を考えて浅く刈ると収量が望めず、収量を求めて深く刈ると品質が落ちてしまいます。

芽伸びの悪い茶園は早く刈る

生産者の方は、芽伸びの悪い茶園を遅く刈る傾向があります。時期を待って少しでも収量を多く採りたい気持ちの現れと思われますが、これは間違いです。芽伸びの悪い茶園は早く出開くため、時間が経過すれば良好な茶園よりもさらに硬化が進みますから、摘採時期を早めた方が良いのです。

ロゴ [4-1-3]芽の重さ
基本編ロゴ 芽の生理生態と根の生育の関係
葉柄角度
栄養状態の良い芽悪い芽


考えられる主な理由

■1-3.なぜ芽伸びがわるいのか

芽の伸びが思ったより悪かった場合、その原因は管理経過によってさまざまです。まず秋の園相を振り返ってから原因を考えてください。
原因として 最初に考えられることは、摘採面に近い部分の分枝が著しく枝が細くなっている場合です。次に、前年夏に病害虫の被害にあっている場合。夏の防除効果が無く芽がやられて側芽が出たことによっても芽数が増えます。また、無理な三番茶摘採も同様の結果となります。その他には、地上部が肥大化すると地下部とのバランスがくずれて樹勢に影響している、または樹齢が古くなって再生能力が衰えているなどが考えられます。
三番茶を摘採する場合は、それだけの樹勢回復能力をもたせる茶園づくりを行うべきです。


左:極端な芽数型/右:更新後の新芽

■1-4.芽数と芽重をみる

芽の状態を見るとき、どのような経緯で今年の芽の状態になったのかをよく考えることが大切です。継続的な茶園管理の結果として、今年の芽を分析して原因追求しましょう。

写真は、今回の巡回で見つけた茶園です。左側は極端な芽数型の茶園で、株の中を見ると枝がとても細くなってほとんどの芽が小さな頂芽です。中にも収穫の対象とならない芽が多くあり、これではよい生産結果を得ることはできません。一番茶後の更新が必要です。
右の写真は芽重型の茶園です。更新後に強い枝が伸びていずれも5mm以上の太さがあり、その太い枝から栄養状態の良い強い芽が平均2本づつ出ています。表面の葉も大きく成熟して色つやがよく、更新による樹勢回復に成功しています。

※次回特集で枠摘み調査の実践をやります。


枝の構成を確認する

■1-5.枝の状態をチェックする

芽数が多くなっている茶園の株の中を見ると、細い枝が密集している状態を確認できると思います。これは繰り返し摘採によって枝数が増えて細くなったのが原因ですから更新が必要と判断し、一番茶後に更新する計画を立てます。

右写真のように太く力強い芽が出ているのは、更新によって枝の構成が良好となった成果です。株の中は更新位置の下から2本程度の太い更新枝が伸びて、更新後の整枝と秋整枝を行った結果として、望ましい枝の構成と芽数になっています。

ロゴ ●[4-5]一番茶後の更新
基本編ロゴ 同じ位置で更新を繰り返すと...
整枝の深さと芽数の増減


活力ある摘採面の母葉

■1-6.摘採面の母葉で秋の園相を再確認

芽の良し悪しを見たら、その生育に大きく関わっているのが秋の園相です。摘採面にある最終葉が肉厚で色つやが良く大型の母葉であれば、前年秋によく働いたであろうことが想像されます。そういう茶園からは大型で良い芽が得られます。 逆に母葉が小型で密集している茶園からは良い芽は得られません。

基本編ロゴ 光合成ではたらく摘採面の葉
←もくじへロゴ次ページへ→
 

特集3もくじ 3-1:芽数と芽重3-2:原因追求3-3:気象の影響3-4:情報収集

 

お気軽にご意見ご感想をお寄せください。

お茶街道文化会
主催:カワサキ機工株式会社

ochakaido@ochakaido.com