特集6.土壌
2:土の中では反応し常に変化している
■2-1.茶園の土壌成分は常に変化している

土壌中の有機物や肥料は、微生物や菌などによって分解されたり、水に溶けて茶樹に吸収されたり、あるいは土壌中にある成分と化学反応して変化したり、水分と一緒に溶脱したりしています。
これらの土壌環境の変化は、土壌中の肥料成分の動きを見ることは大切なことです。特に硝酸態窒素はイオン吸着されず、地下に移動し雨量によっては地下水や、河川、池などに流出し水質汚染の一因になります。環境保全として、硝酸態窒素10PPM以下の濃度でなければなりません。水1L(1kg)に硝酸態窒素1mg以下です。

ロゴ [2月号-1]茶樹の窒素吸収のしくみ
[7月号-5]土壌診断
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基本編ロゴ 土壌診断の見方


■2-2.塩基の交換(陰イオンと陽イオン)

土壌の粒子は陰イオンですから、そこに吸着するのは陽イオンです。茶樹が要求する養分には五元素(窒素・リン酸・カリ・マグネシウム・カルシウム)があり、土壌はこれらの養分を吸着して保つ。その能力が高いほど養分供給能力が高いということになります。このように土壌が塩基類を吸着する能力のことを「塩基交換容量」といいます。

塩基交換容量は、ホテルの規模と混み具合にたとえるとわかりやすいです。塩基交換容量が高い=収容人員の高い大きなホテルで、生かす空室が多いかどうかにたとえられます。

土は陰イオン。表面に陽イオンの成分が吸着する。 溶脱や吸収によって失われ、そこに水素イオン(H+)が吸着。

■酸性化
しかし、塩基は簡単に置き換えられます。この吸着していた成分が利用されて空くと、そこに水素が入ってきます。 たとえば硫安を与えると硫酸がカルシウムと結合してカルシウムが欠乏し、その累積によって茶園の酸性化が進みます。これを放置すると肥料の吸収利用率が落ちるなどの障害が出てきます。降雨量の多い日本では、これらの塩基類が溶脱しやすいため、土壌の酸性化が起こりやすい傾向にあります。茶樹は酸性に強い作物ですが、肥料を施す畦間土壌の酸性が強く、強酸性の場合は矯正する必要があります。

基本編ロゴ 酸性化や排水不良によるマンガン過剰障害


■2-3.土壌のpH値

降雨や施肥によって茶園の酸性度は変化します。水は酸素と水素でできていますが、酸素が利用され水素が濃度として残った場合に土壌の酸性化が進みます。

とくに畦間のpH値は施肥直後には茶樹の限界を超えたpH値になっていて、通常でも3.x程度の強い酸度を示す茶園も少なくありません。

基本編ロゴ 環境問題-各県の施肥基準-
濃度障害とは


■2-4.土壌の水分と水が果たす役割

土に形がある以上水分があります。その土に含まれる水の性質には3つあり、(1)空気中の水分を吸収した水分、(2)毛管水(土壌中の毛細管に含まれた水分)、(3)重力水(粗孔隙を通る水)です。
このうち、作物にもっとも利用されるのは(2)毛管水です。これは土壌中の毛細管孔隙の水、簡単にいえば土壌粒子内の小さな隙間に保持されている水分です。(3)の重力水は、水が通りやすい粗孔隙に含まれているため、地表の養分を下層に送る役割を果たしています。しかし、雨が多い時は重力水は養分や細かい土の粒子を地下水に流してしまいます。そのため重力水は作物に利用される量は極めて少なくなります。最も作物に利用されやすいのは、毛管水です。


 

■2-5.腐植は地力のバロメータ

土壌の腐植は動植物の遺体など多種多様なものが、土壌微生物によって分解された複雑な物質です。広い意味では土壌有機物全体を腐植と言っていますが、本当の意味は分解された腐植物質と腐植酸(黒褐色無定型)を腐植と言います。
腐植は栄養腐植と耐久腐植に分けられ、栄養腐植は含まれている炭素が分解され窒素ガスや作物の同化作用を促し、更に炭酸水となって土壌の団粒化を進め土壌を膨軟にします。耐久腐植と言うのは微生物に分解されずに土壌に長く留まっている腐植で、腐植酸あるいは真性腐植酸といわれています。色が黒褐色ですから土壌温度を高め土壌を軟らかくしたり、軟らか過ぎる土を結合するなどに役立ち、土壌の団粒化によって隙間を多くし保水性や保肥力を高めます。また、土壌の酸性化を抑えリン酸の溶解度を高める効果があります。 特に赤黄色土や砂質土壌など腐植の少ない土壌には有機物の供給は欠かすことが出来ません。また、長期間連用しないと腐植の増加は出来ませんから、年中行事として身近な有機素材を出来るだけ多く投入するよう心がけてください。茶園の場合は整枝や更新の際に地上部の一部を刈り落とし、有機物として利用できますが、それだけでは十分ではありません。堆旧肥や敷き草などを使用し腐植の原料を絶やさず供給することで、その累積効果により肥沃な土壌に改善され生産性の高い茶園になる筈です。腐植の多少は地力のバロメータと言っても間違いではないと思います。

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特集6もくじ 6-1:土のはたらき6-2:土の中の変化6-3:理想の三相分布6-4:土質や土性のこと

 

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