特集6.土壌
3:理想の三相分布とは?
■3-1.理想の三相分布。割合は1:1:1

理想的な三相分布は固相1:液相1:気相1です。しかし、これはありえない数値で、現実的な目標値としては固相50%:液層25%:気相25%です。
このような物理性の改善維持は、土壌の耕起や有機物の投入、排水設備の改良など人為的な作業によって得られるもので、しかもち密化は自然に進みますから膨軟性を維持するための土壌管理が必要です。土壌が自然に緻密化する度合いは土質土性によって異なり、数年しかもたない土もあれば20年位維持できる土壌もあります。

ロゴ [2月号-1]土づくりとは


■3-2.茶樹の根にとって快適な環境

茶樹の根は多くの酸素を必要とします。土の環境が良ければ、根は養水分を求めて深さ1mほどにも伸びます。土壌に過不足なく必要とする成分が保持された環境で、根が養分を吸収して地上部の生育へと潤沢に利用されていれば、地上部と地下部のバランス(TR率)の良い生育良好な茶樹となります。そのため、土壌の通気性・透水性・保水性・膨軟性(ぼうなんせい)を保つことは、茶樹の生育においてとても重要な条件です。
地下部の環境が悪いとは、土壌の膨軟性がなくなり、ち密化が進んでいるケースが多くみられます。こうした土壌では物理的に根が伸びにくい環境となり、根が浅いためにわずかな干ばつにも被害を受けることになります。
また、膨軟性が高くても、土壌の養水分が不足していると根の生長は抑制され吸収機能が低下します。養水分を保持する土壌にするには腐植を高めることです。そのためには、土を耕し有機物を出来るだけ多く入れ、毎年続けて入れること。さらに、入れた材料は土と良く混ぜることが大切な処理です。

基本編ロゴ 畦間土壌の耕起と細根の生育


■3-3.土壌の通気性(水の道は空気の道)

水と通気性は密接に関係しています。水の通った道は、排水が進めば空気が入る道となります。逆にいえば、透水性が悪いと通気不良を起こして茶樹に悪影響を及ぼしますから、茶園を新たに造成する場合には排水が良いことが条件となるのです。地形によって水がたまりやすい所や地下水位の高い所では過湿障害を起こしたり、逆に干ばつを受けることがあります。また、地下1〜2m程度の根のはる位置に不透水層がある場合には、空井戸を掘るなどして排水対策をする必要があります。

基本編ロゴ 茶の根が必要とする酸素量
土壌改善の方法(造成時)


■3-4.微生物が生息しやすい土壌環境

土壌中には多種多様な菌などの微生物、昆虫が生息しています。微生物は有機物の分解を助け、ガスを発生して物理性の維持にも役立っています。このような微生物の生息は、土にとっても作物にとっても良い環境をつくるのに役立っています。有機物や肥料は微生物によって分解されます。微生物の多くは好気性ですから、通気性透水性がよく、保水性が高い土壌の状態を保つ土づくりは、微生物の生息に良い土壌環境を維持し、土壌が養分をもつ能力を高めることにつながります。

 

基本編ロゴ 通気性は自然に保たれるか


有機物の投入

■3-5.物理性の持続に役立つ有機物

深耕してフワフワになった土壌でも、雨の力や乾燥の繰り返しで数年のうちに硬くなっていきます。この自然なち密化をゆるやかにし、天然のサイクルで膨軟性を維持するのに役立つのが有機物の投入です。有機物を土壌にすき込むことによって土が軟らかくなり、ゆるやかに分解して濃度障害の起こらない養分吸収ができ、微生物や昆虫の繁殖によい土壌環境となります。その時に排出される炭酸ガスは酸素同化作用を促進し、炭酸水となって養分を可溶成にして土壌の団粒化を進め、土壌を膨軟にします。有機物は最終的には腐朽物や腐食酸などを残し腐植となります。従って、土壌の物理性維持には有機物の投入が重要な対策となります。

基本編ロゴ 有機物の効果について
有機物の施用の方法と効果
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特集6もくじ 6-1:土のはたらき6-2:土の中の変化6-3:理想の三相分布6-4:土質や土性のこと

 

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