8月号
1.台風シーズンがやってくる!
-潮風害の対策と処置- |
最終芽の生育時期にあたる梅雨から夏の気象は、茶樹の生育に大きな影響を及ぼします。とくにこの時期に心配される気象災害は、水不足と高温障害です。 |
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●8-1-1.台風が茶園に及ぼす災害 7月から9月にかけては台風が上陸する季節を迎え、沿岸部の茶園では被害を受ける可能性が出てきます。台風の被害とは、風によって運ばれた塩が茶葉に付着して起こる被害と、風による物理的落葉の被害とがあります。 さらに二次的被害として、摩擦によって受けた傷から病原菌が侵入することもあります。 また、造成した茶園では、極端に雨量が多いと土砂崩れなどの災害の危険性もあります。 |
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●8-1-2.潮風害とは? 潮風害とは、風による摩擦で傷を負った茶葉に台風で飛ばされた海の潮水が付着し、塩分が樹体に浸透して起こります。潮風害にあうと茶葉が褐変し、浸透すると枝が枯死するまで被害が及ぶこともあり、沿岸部に近い茶園では深刻な被害をもたらします。摩擦による傷は、9〜10月で茶葉が硬化していれば傷が付きにくいのですが、8月の葉がまだ柔らかい時期には傷が付きやすいので注意が必要です。 台風による塩の被害は沿岸から4kmほどまで届くと言われます。潮風害は強風の台風の場合に発生しやすく、雨台風の場合や台風通過後に雨が残った場合には、塩分が流されて被害は少なくてすみます。茶園の立地と風向きから被害を予測して早急に対処するために、気象情報に注意をはらいましょう。 |
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まず大切なのは、気象予報に気を配って台風の接近、風の強さ、上陸の方位などの情報を収集することです。しかし、台風の上陸が予測されても、現実的には事前の潮風害対策というのはむずかしく、台風通過後に早急な処置をとる体制を整えておくことが得策のようです。防風ネットで茶樹を直接被覆することも考えられますが、これは摩擦によって茶葉に傷をつける可能性があり最良の対策とは言えません。 恒久的な対策としては暴風垣の設置がありますが、広範囲に効果を求めるにはかなりの高さを要し、また強風に耐えるだけの強度を持たせる設備には莫大な投資を必要とするため、現実的には困難です。被害にあいやすい立地では、防風林を設置することも考えられます。 |
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●8-1-4.潮風害の対策(幼木園) 幼木園や自然仕立ての茶園は、風が当りやすい形状のため葉に傷がつきやすく、潮風害の可能性が高いと言えます。とくに幼木園では、強風によって茶樹が回転して断根したり、根元の土壌がすり鉢状にえぐられて乾燥するなどの現象は、幼木に大きなダメージを与えます。 また、最近の幼木園で行われている間作による防風が効果を発揮しています。 |
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●8-1-5.被害園の事後処理 茶樹に塩分を認めたら、4時間以内に4〜5mm(4〜5t/10a)を散水して洗い流します。 潮風害によって茶葉の褐変、枝枯れ等の被害が起こります。軽微な被害であれば、そのままおいて落葉を待って秋整枝します。先枯れ、枝枯れなど被害程度が著しい場合は被害部位を確認し、樹勢の回復を待って秋整枝または春整枝を行います。 また、台風が過ぎた後に潮の被害は無くても強風の摩擦によってできた傷から赤焼け病菌が侵入する可能性があります。被害を未然に防ぐために殺菌剤を散布してください。 ※被害が著しい場合には、秋整枝を春整枝に変更するなど、樹勢回復の計画を立てる必要があります。 |
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●8-1-6.土砂崩れにも注意 茶園の造成時に盛り土や埋め立てを行ったところは、台風によって大量の降雨があると土壌が流される(エロージョン)場合があり、地滑りや崩壊の事故が起こることもあります。安全のために、台風上陸の可能性が高まったら、排水溝や側溝の管理をしておきましょう。 |
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8月号もくじ |8-1:台風 |8-2:秋肥2・防除|8-3:秋整枝の意味|8-4:秋整枝の基礎|8-5:遅れ芽の影響| |
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お茶街道文化会
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